日本がずっと「停滞」から抜けられない4つの要因 衆院選候補者の公約「本気度」を見極めるには

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賃上げは、生活水準を改善するだけではなく、消費者購買力を上げて経済成長を促進する。日本の個人消費は明らかに勢いがない。これは消費者が消費を拒否しているのではなく、使える金が少ししかないからである。では、次の衆議院選を経て新政権がやるべきことは何なのか。

1つ目のステップは、最低賃金の上昇を加速することだ。全国平均の902円は、国際標準(イギリス、ドイツ、フランスの11ドルに対して日本は8.40ドル)よりはるかに低い。最低賃金が730円だった2010年、当時の民主党政権は目標1000円に設定した。2015年、安倍元首相は1000円の目標を採用し、2020年までに年率3%ペースで達成すると公約した。

目標に達成し、それを超えてヨーロッパレベルに近づけば、数千万の人々を助けただろう。最低賃金が最低より低い人だけでなく、それより10~20%以上稼ぐ人の賃金を押し上げるのがその理由だ。日本のパートタイム労働者の平均時給が約1100円で、彼らが日本の労働者のほぼ1/3を占めることを考えると、最低賃金の底上げによる生活水準と消費者需要へのインパクトは目覚ましいものになるだろう。

賃上げは失業にはつながらない

ある諮問委員会は今年度、最低賃金を3%引き上げて930円にする提言を行った。日本の経営者団体のような反対論者は、新型コロナウイルスを理由に今が最適な時期ではないと言うが、多くの経営者にとって適切な時はほとんどないようだ。彼らはまた、賃上げは失業につながるとも主張している。

ところが実際には、カリフォルニア大学バークレー校のデヴィッド・カード教授が、この主張が誤りであることを証明してノーベル賞を受賞したばかりである。最低賃金が妥当なペースで上昇すると、雇用への影響は、よくも悪くも、最小であると同教授は実証した。

日本ではまた、最低賃金が引き上げられると、雇用主がより多くの人を正規社員として雇用する方向に動くと考えられる。正規社員は非正規社員に比べて3分の1以上時給が高い。また、正規社員のトレーニングに多額を投資しているため、労働生産性、そして経済成長につながるだろう。

2つ目のステップは、労働法の強制力を強めることだ。同法はすでに、同一労働に対しては男女や正規・非正規関係なく同一賃金を求めている。また、昇進機会での男女間差別を禁止し、マタニティハラスメントを禁止する法律も強制すべきだろう。

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