ユーシン、2度目の社長公募はどうなった? 後継者選びに挑んだ80歳社長

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それから半年後、同社の見解は180度変わってしまった。8月中旬の当社取材に対し、ユーシンは「書類選考の時点で通過者がいなかった。ほとんど面接は行わないまま、打ち切りを決めた」(広報)と説明したのだ。

最大の原因は肝心の田邊社長が体調を崩しがちだったことだ。今年5月頃から、田邊社長の出勤は月に1、2度にとどまっているという。社長公募も開始から1カ月ほどで、すでに候補者の選定作業が滞っていた。これにより田邊社長自身が気力をなくしたのか、候補者側がしびれを切らしたのかは定かではないが、公募は打ち切りとなってしまった。

国内同業の買収は遠のく?

トップ人事を巡っては迷走するユーシンだが、足元の業績はすごぶる順調だ。進出している各国で自動車メーカーへの納入シェアが高まるほか、昨年フランス自動車部品大手のヴァレオ社から買収したキーセット部門も大きく貢献。2014年11月期は大幅な増収増益を見込んでいる。

ただ、旧ヴァレオ社のキーセット部門との協業は、生産、製品開発などさまざまな面でもう一段進める余地があり、今後トップの判断が問われる場面は多い。さらに田邊社長自身が公言しているアルファ、東海理化など国内競合大手へのM&Aも、社長不在では前に進まないだろう。

2月のインタビューでは、「僕はもう80歳。手遅れになる前に次の社長を選びたい」と田邊社長は焦りを見せていたが、一方で「社内で(社長候補を)育成するのは無理」とも語っている。今後も「何らかの方法で、社外からトップになり得る人材を連れてくる方針」(広報)。3度目の正直で、会社の未来を託せるトップを見つけられるか。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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