社長公募が問いかけたワンマン経営の落とし穴

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社長公募が問いかけたワンマン経営の落とし穴

「キーワードは“合理性”だ。これから自動車業界は、今まで以上にグローバルなマーケットでの競争になる。そこで勝負するには若くて優秀で、語学に堪能な経営者が必要だ」と、ユーシンの田邊耕二社長は社長公募の目的を語った。

ユーシンは東証1部に上場する自動車部品メーカー。マツダやスズキを顧客にキーセットや空調のコントロールパネルなど電装品を納める。2010年11月期は売上高624億円、営業利益は過去最高の58億円。今期も震災の影響をはね返し、タイや中国の製造力を倍増、国内工場の再編を進めるなど拡大路線を打ち出している。今後の海外展開を担う経営者を確保するため、10年7月に田邊社長の後任候補を全国紙の求人広告で募集、一躍有名になった。

上場企業の社長、年収3500万円以上という提示は大きなインパクトがあった。1722人の応募者が殺到。田邊社長は2回の面接を経て、社長候補に外務省のキャリア官僚である八重樫永規氏(48)、副社長候補にフェリカネットワークス取締役の丸子秀策氏(48)、そのほか事業部長クラス数人の採用を決定した。さらに社風を守るため、田邊社長の実娘である田邊世都子氏(44)を社外取締役に迎える。5月19日の臨時株主総会で3人を役員に加え、八重樫氏と丸子氏は半年ほど現場を学んでから社長と副社長に就任する。

田邊社長は「想定以上に優秀な人を集めることができた」と満足な様子。年収1000万円以上を対象にした転職サイト「ビズリーチ」を運営する南壮一郎氏は「通常では絶対に集められない優秀な人を集めることができた。大成功だ」と指摘する。

繰り返される後継者探し 前社長を1年半でクビに

実は、田邊社長が後任を外部から招くのは今回が初めてではない。創業者の息子である田邊社長は1934年生まれの77歳。61年にユーシンに入社し、76年に専務、78年に社長に就任して以来、タイやポーランドなど海外への進出を手掛け、30年以上にわたってトップの座に君臨してきた。「社内に海外展開を担える人材がいない」と嘆く田邊社長の抱える爆弾は健康問題。わかっているだけでも、社長公募中の半年間で3回の入退院を繰り返している。

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