伊藤忠商事の中国食料戦略、日本企業を大陸へつなぐ

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いずれは中国に 第2の食料カンパニー

伊藤忠の鶴島孝保・食料中国事業推進部長は話す。「勝手の違う中国で日本企業がすべて自力で事業を成功させるのは難しく、どの現地企業と組むかが大事になる。アサヒのような大きな成功事例が出てきたため、最近では企業から頂新との仲介を依頼されるケースも増えている。複数の案件が候補に挙がっており、できれば年内にさらに三つや四つ、話をまとめたい」。企業の側から見ると、伊藤忠が資本参画する頂新グループは、他の中国企業よりもパートナーとして安心感がある。

もっとも、伊藤忠の決算を見ると、持ち株会社出資による足元の業績貢献はまだ小さい。頂新グループの利益の大宗を稼ぐのは即席麺・飲料事業を手掛ける康師傳だが、同社は上場しているため、持ち株会社の頂新に帰属する利益はその約4割にとどまる。その結果、伊藤忠の前期決算において、頂新からの持ち分利益は臨時利益を除いた正味ベースで推計30億円前後。投じた大金に見合った果実を得るのはまだ先だ。

とはいえ、中国有数の食品グループとがっちり手を組み、資本参画にまで踏み込んだ伊藤忠は、中国の食料ビジネスで大手商社の中でも先頭を走る。他の商社も中国の需要取り込みを狙ってはいるが、信頼できる有力なパートナーがなかなか見つからず、中国企業に対する投資リスクの大きさにも二の足を踏んでいる。すでに大きな足場を築いた伊藤忠が、最も有利なポジションに立っているのは間違いない。

青木専務は、いずれ中国に第2の食料カンパニーを作りたいという。「おそらく10年後、あるいはもっと早い時期に、中国が食料部門の利益の過半を稼ぐようになるだろう。そのときには、東京が本社です、なんて言っていられない」。13億人の巨大な胃袋を取り込もうと、中国へ大きく踏み込んだ伊藤忠商事。眼前に広がるビジネスチャンスは大きい。

■伊藤忠商事の業績予想、会社概要はこちら 

 (渡辺清治、高橋志津子 =週刊東洋経済2010年7月10日号)

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