伊藤忠商事の中国食料戦略、日本企業を大陸へつなぐ

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今回の製パン事業立ち上げに当たって、技術面で重要な役割を果たすのが日本の敷島製パン。同社は合弁新会社に製造技術や品質管理といった生産関連のノウハウを提供するほか、商品開発でも技術的な助言を行う。すでに製造設備や商品開発の担当者を中国に派遣し、頂新グループの社員と一緒に工場の準備や商品の開発作業を進めている。商品の品質を左右するプレミックス粉など原材料は、中国内にネットワークを持つ伊藤忠が調達・手配する。

完全な内需依存から脱却 日中橋渡し役として奔走

「われわれと一緒に中国に出ていく気はありませんか」

名古屋に本社を置く敷島製パンの元に、当時はあまり縁のなかった伊藤忠から打診が舞い込んだのが5年前。しかし敷島製パンは当初、この話に乗り気ではなかったという。というのも、同社は90年代に国内大手スーパーに誘われて中国にインストア・ベーカリー店を出したものの、赤字続きで撤退を余儀なくされた苦い経験があったからだ。

にもかかわらず、最終的に今回の事業参画に踏み切ったいちばんの理由は、中国市場の有望性だ。農林水産省の統計によると、国内パン業界の生産量は過去10年間で8%近くも減った。一方、中国はまだ1人当たりの製パン消費量が日本の1割程度にすぎず、伸びしろは非常に大きい。

「日本では昭和40年代の高度成長期に、簡便性の高い量産パンの需要が一気に広がった。例えるなら、今の中国の製パン市場は日本の40年代初頭。まさにこれから大きく伸びていく」(盛田兼由・敷島製パン専務)。少子高齢化で国内需要が細る中、同社にとっても、中国再挑戦は避けては通れない道だった。

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