伊藤忠商事の中国食料戦略、日本企業を大陸へつなぐ
13億人もの人口と経済成長を背景に、急速な消費拡大が続く中国。調査会社ユーロモニターの推計によると、中国の加工食品の市場規模は100兆円を超え、すでに日本の5倍。その巨大な“胃袋”を狙っているのは他の大手総合商社も同じだが、中でもいち早く中国市場に足場を築き、ビジネスを拡大させつつあるのが伊藤忠だ。
商社にとっても国内市場の成熟化は悩ましい。総合商社の食料事業は、原材料供給などによるトレーディング収入と出資する食品関連企業からの取り込み益(持ち分利益や配当)が利益の柱。いずれも相手は日本企業であり、商社の食料ビジネスは完全な内需依存型と言っていい。国内の需要そのものが縮小すれば、当然、商社の儲けも細っていく。
では、いかにして巨大な中国の需要を自社のビジネスに取り込むか--。伊藤忠はその手段として、頂新グループと手を組んだのだった。
政府系企業が多い中国の大手食品企業の中にあって、頂新グループは台湾系の純粋な民間企業。台湾系企業は中国の実情に詳しいうえ、資本主義の考え方が浸透しており、契約も重んじる。さらに魏4兄弟の長男で頂新グループのトップ、魏応州氏の経営手腕は、即席?事業を大成功させた実績が証明していた。
伊藤忠は02年に包括的な戦略提携を締結し、第1弾として04年に共同で中国コンビニ事業をスタート。さらに、日本の食品メーカーの品質管理、製造技術を高く評価する頂新グループの要請を受け、頂新と国内食品メーカーとの橋渡し役として奔走した。伊藤忠がコーディネーターとなり、頂新と日本企業による複数の合弁事業が動き始めている。