日本一過酷な山岳縦走「会社員」参戦が実は多い訳 約415kmをほぼ無支援で8日以内に走破する

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2017年の山シーズンに入ると、毎週のように日本アルプスに通うようになった。当時、残業が多いときは月に80時間ほどにのぼることもあったが、週末の山時間は確保した。

「金曜に仕事が終わって、そのままアルプスの登山口行きの夜行バスに乗って、土日は山でトレーニング。日曜夜に帰って疲れてすぐ寝て、そのまま朝出社、という生活をしていた」

ハードだったが、時間のやりくりはむしろ面白かったという。

「仕事が忙しかったので、そのストレスや疲れを土日の山で発散するような感じ。身体は疲れるけど、頭はすごくリフレッシュできた。山行はハードだったけど充実していました」

初出場の2018年の本戦では、眠気とむくみがひどく、最後の85㎞のロードは特につらかったという。

「むくみで手足がパンパンになってつらく、完走できないんじゃないかと思っていた。家族が応援に来てくれて、何とか日が沈む前にゴールしたいと。2年くらいかけて準備してやり遂げた、というのは自信がつきました」

TJAR2018で山を進む星加さん(写真:金子雄爾)

目標を立てて取り組むのは仕事も同じ

今夏のTJAR2020は、2日目に中止となり、残念な気持ちの一方、序盤からの体調不良で「どこかホッとする気持ちもあった」と振り返る。2回出場した選手は次回エントリーできないというルールができたため、星加さんが次にTJARに挑戦できるのは、3年後以降となる。「年齢的にはまだまだいけると思う。やれることはやっていきたい」

星加さんがTJARに魅力を感じる理由は――。

「日本海から太平洋に行く、という冒険心ですかね。しんどいのはわかっているけど、子ども心を思い出すようなワクワクがあった。やってみたい、挑戦してみたい、と思いました」

同年代の選手が多い理由については次のように分析する。

「TJARは長いレースなので、いろいろトラブルも起きる。そこでの対処とかは経験がものをいうところもある。体力面だけではなく、経験や判断力も必要。あとは若い人たちはこんな過酷なことをわざわざやらないかと。40代で刺激が欲しくなる年代なのかな(笑)」

星加さん自身、趣味にのめり込んだのは「山とマラソンが初めて」だそうだ。

「山が好きかと言われると、僕の場合、よくわからない(笑)。山登りは、苦労して登った先できれいな景色が見られたり、達成感がある。山もマラソンも、達成感が味わえるからここまで続いてきたんじゃないかなと。目標を立てて取り組むのは、TJARも仕事も同じ。仕事面でも良い影響が出ていると感じます」

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