「コロナ直撃のアパレル」から見える経営のヒント ワールドとアダストリアの財務分析からわかる

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注1)アダストリアの雇用調整助成金は営業外収益に集計されているが、ワールドと同様に集計するために、販売管理費から控除している。
注2)ワールドの営業利益は、同社が集計しているコア営業利益を使っている。
注3)ワールドの特別損失はその他の費用の金額を集計している。

コロナの影響をあまり受けていない2019年度のアダストリア(2020年2月期)とワールド(2020年3月期)は、いずれもほぼ同額の2300億円前後の連結売上高をあげ、5%台の営業利益率、3%前後の当期純利益率と一定の業績を確保している。しかし、コロナの影響を大きく受けた2020年度は、アダストリア(2021年2月期)は17.3%の売り上げ減少、ワールド(2021年3月期)は23.7%の売り上げ減少と、いずれも大幅な減収となっている。また、営業利益も、アダストリアは黒字(雇用調整助成金調整後)、ワールドは赤字(コア営業利益ベース)という違いはあるものの、いずれも大幅な減益となっている。さらに、2社とも当期純利益が赤字に陥っているが、中でもワールドはブランド事業に関連するのれんの減損、店舗・事務所撤退損失、従業員の解雇関連費用などの構造改革費用(138億1200万円)を中心に大きな特別損失(170億7600万円)を計上した結果、大幅な赤字となっている。

このように、新型コロナウイルスの感染拡大は2社の業績を大きく悪化させている。ただ、比較するとワールドの売上高や利益の落ち込み幅がより大きい。このような違いが発生している理由について見ていこう。

ROEとその分解式から見る2社の違い

まず、アダストリアとワールドの全体的な傾向を見るために、株主から見た投資効率を表すROE(Return On Equity:自己資本利益率=当期純利益÷自己資本)を計算し、それをデュポンシステム、つまり収益力を表す当期純利益率、資産の利用効率を表す総資産回転率、借入をどの程度使っているかに関係する財務レバレッジの3つの比率に分解していく分析方法を使って、2社の新型コロナウイルスの影響を受ける前のもともとの状況と、その影響を受けた後の変化を見ていこう。

ROE=当期純利益/自己資本
      =当期純利益/売上高 × 売上高/総資産 × 総資産/自己資本
      =  当期純利益率  × 総資産回転率  × 財務レバレッジ
注)当期純利益としては、親会社株主に帰属する当期純利益を使用している。
  自己資本は純資産から非支配株主持分、新株予約権を差し引いて計算している。
  総資産と自己資本の金額は、事業年度末の数値を使用している。 
【アダストリア】
(2020年2月期)
 11.2%=  2.9% × 227% × 172%
(2021年2月期)
   −1.4%=−0.4% × 193% × 188%
【ワールド】
(2020年3月期)
   9.9%=  3.4% × 90% × 321%
(2021年3月期)
 −21.9%=−9.5% × 73% × 313%

この数字を見るとわかるように、コロナの影響をまだあまり受けていない2020年2月および3月期の段階では、2社のROEはいずれも10%前後と、同時期の日本企業の平均である6.7%を上回る水準を確保している。

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