「コロナ直撃のアパレル」から見える経営のヒント ワールドとアダストリアの財務分析からわかる

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ただ、デュポンシステムの分解式を見てみると、当期純利益率はワールドが若干高いものの、総資産回転率はアダストリアが圧倒的に高く、一方で財務レバレッジはワールドがかなり高いといったかなり違った傾向になっている。

このうち、大きな違いのある総資産回転率の違いは、ワールドが①過去に実行したいくつかの買収によって、無形の価値を買収した金額を意味するのれんが大きくなっていること、②会計基準のグローバルスタンダードであるIFRSを採用する中で、日本の会計基準を使うアダストリアと違って短期間のリース契約が資産として計上されていること、③自社で製造する傾向が相対的に強く、店舗数もアダストリアと比較して約1.8倍と多いことから有形固定資産や在庫が多くなっていること、などから、売上高に比較して資産の金額がかなり大きくなっていることが理由である。

一方で、財務レバレッジの違いは、無借金の状態にあり安全性が非常に高いアダストリアと、純資産(833億2800万円)とほぼ同額の約800億円の借入金があり、財務的に危険な状態ではないものの安全性は一定水準を確保するレベルとなっているワールドの財務的な安全性の違いが表れている。

新型コロナで当期純利益率と総資産回転率が大きく低下

次に、新型コロナウイルスの影響を受けた2021年2月および3月期のROEを見てみると、2社ともマイナスに転落している。さらに分解式を見てみると、2社とも前事業年度に比較して当期純利益率と総資産回転率が大きく低下しているが、財務的な安全性に関係する財務レバレッジはそれほど変化していない。

このうち当期純利益率は、2社ともマイナスとなっており、いずれも赤字に転落していることを意味しているが、その下落幅はワールドのほうが激しくなっている。これは、前述のようにワールドのほうが大きな特別損失などを計上した結果、当期純利益の赤字がより大きくなったためである。

一方で総資産回転率は2社とも下落しているが、この主な理由は前述の2社の売上高の大幅な減少である。

このように、新型コロナウイルスの感染拡大は、2社の業績に対して売上高の減少と利益率の低下を中心に大きな影響を与えている。それでは、この売上高の減少と利益率の低下について2社の状況をくわしく見ていこう。

アダストリア(2021年2月期)とワールド(2021年3月期)は、決算説明の中で、前事業年度に比較して大幅に売り上げが減少した主な理由として、いずれも新型コロナウイルスの感染拡大の中での上半期を中心とした店舗の休業や営業時間短縮、また外出自粛の中での来店客数の減少をあげている。たしかにこれらが2社の売り上げ減少の主な理由であることは間違いない。

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