クワッドの将来について、現在のところ参加国を拡大する方向には向いていない。むしろ、クワッド4カ国によりパンデミック、気候変動、サイバー、技術安全保障面において、より具体的な連携を深める可能性が高い。
日本はクワッドの提唱国であるとともに、4カ国が集まりやすい地理的位置にある。日本に事務局を誘致するなどして、クワッドが具体的成果を継続的に挙げられるよう日本が主導することが求められている。
「自由で開かれたインド太平洋」とは何か
クワッドと「自由で開かれたインド太平洋」(以下、FOIP)の関係は、クワッドが1つの手段であるならば、FOIPは目標、ビジョンというふうにとらえることができる。
FOIPという構想(当初は戦略と呼んでいた)は、2007年8月、当時の安倍首相が、訪問先のインド国会で行った「2つの海の交わり」という演説がその源流になる。
同首相は「太平洋とインド洋は、今や自由の海、繁栄の海として、1つのダイナミックな結合をもたらしています。従来の地理的境界を突き破る『拡大アジア』が、明瞭な形を現しつつあります。これを広々と開き、どこまでも透明な海として豊かに育てていく力と、そして責任が、私たち両国にはあるのです」と力説した。当時、太平洋とインド洋という2つの大洋を一体としてみる戦略的な発想が、従来にはない新鮮なものであった。
それから9年の時を経た2016年8月、ケニア・ナイロビで開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)で安倍首相が「世界に安定、繁栄を与えるのは、自由で開かれた2つの大洋、2つの大陸の結合であり、日本は太平洋とインド洋、アジアとアフリカの交わりを、力や威圧と無縁で、自由と、法の支配、市場経済を重んじる場として育て、豊かにする責任をにないます」と呼びかけたのがFOIPの第一声であった。
翌年11月、ベトナムで開催されたAPEC首脳会議での演説で、トランプ大統領は「FOIPというビジョンを共有できたことを光栄に思う」と表明し、アメリカ大統領も日本発のFOIP構想を踏襲したのであった。バイデン候補は大統領選に勝利後、一時期FOIPという表現を使わない時期もあったが、就任後は引き続きFOIPを使用している。
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