新首相がいきなり奇策「31日へ選挙前倒し」の成否 側近たちも「意外」と驚いたその狙いとは?

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その段階で、岸田首相は衆院選投開票日について11月7日か11月14日で迷っていたとされる。ポイントとなったのは10月30、31日の日程で、イタリア・ローマで開催される20カ国・地域首脳会議(G20)への出席の可否だった。

第2次安倍政権で歴代最長の4年7カ月も外相を務めた岸田首相にとって、国際舞台デビューの絶好の機会となることは間違いないからだ。ただ、11月7日投開票なら選挙戦の最中の外遊となるため、帰国後の11月2日が公示日となる14日投開票も有力な選択肢となっていた。

その一方で、岸田首相が掲げる「数十兆円規模の大型経済対策」の早期策定のためには、その土台となる補正予算、来年度予算の編成遅れは許されない。担当する財務省幹部も「11月7日投開票がぎりぎり」との判断を示したとされる。

このため、岸田首相とその周辺も「11月7日」を前提の根回しを始め、甘利幹事長らも了解していた。しかし、岸田首相があらためて加藤氏を通じて選挙事務を担当する総務省に確認した結果、急浮上したのが10月31日投開票案だった。

憲法や公職選挙法を踏まえれば、「衆院選投開票は解散から40日以内」「選挙手続き上、解散から投開票まで23日以上が必要」というのが基本だ。これは事前予測ができないからだ。しかも、今回の首相指名から10日後の解散は戦後最短となる異例のケースとなる。

「逆転の発想」で10月31日投開票を政治決断

しかし、総務省からは「事前に解散の日時が決まっていれば、それを前提に投開票日を前倒しするのは手続き的にも可能」との回答がもたらされた。これを受けて岸田首相は自らの政治決断として10月31日投開票に踏み切った。

確かに、岸田首相が就任時の4日に解散と投開票日の日程を明言すれば、選挙実務を担当する総務省や各都道府県選挙管理委員会は立候補予定者の事前審査受付や、投票所の確保などの準備を進められる。まさに、「解散してから投開票日を決めるのではなく、事前に解散日と投開票日を決めておくという逆転の発想」(総務省)だった。

だからこそ、虚を突かれた野党側は「国会論戦を封殺する暴挙」などと猛反発。岸田氏周辺からも「奇策を弄するのは岸田さんらしくない」との声も出た。しかし、岸田首相は「ご祝儀相場の内閣支持率のまま選挙に入れば、議席減は最小限にとどめられる」(自民選対)との誘惑に抗しきれず、「決断する岸田もアピールできる」として前倒しを決めたのが実態。

選挙戦が終盤を迎える10月26日には国民が注目する秋篠宮眞子様と小室圭さんの結婚式と記者会見も予定されている。その後数日間は、多くの情報番組が「眞子様ご結婚」報道一色となることは間違いない。

選挙戦への影響は読みにくいが、選挙専門家は「与党に不利となるはずはない」と指摘する。ただ「皇室利用」の批判も招きかねず、その点を初会見で問われた岸田首相は、生真面目な応答ぶりの中で唯一反応を避けた。

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