コニカミノルタが「自治体DX」に力を込める理由 複合機に逆風が吹く中、新領域に活路見いだす

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SIerがシステム・ソリューションを開発する際に自治体の業務データを参照する情報基盤としてもプラットフォームは活用できるため、すでに自治体に食い込んでいるこれらの企業はライバルではないと見ている。さらに、自治体と同様に規制が強い銀行向けへのサービス拡大も視野に入れる。

「自治体DX支援プラットフォーム」をコンサルタントやマッチングビジネス事業として育てるため、あえて自社の複合機や関連するソリューションを自治体には売り込まない戦略だ。別府氏は「DXソリューション提供を収益源としつつある複合機メーカーにも競合他社という枠を超えてプラットフォームを利用してもらいたい」と語る。

「2022年9月までに全自治体の30%、500自治体を押さえることができるかどうかが勝ち抜いていく勝負の分かれ目だ。売り上げは60億円を目指したい」と別府氏は強気だ。今年度中に全国1700ある自治体のうち100自治体へ導入という目標を掲げ、続々と導入自治体を増やしている。

10月1日には自治体DX業務を専門とする子会社、「コニカミノルタパブリテック株式会社」を設立。別府氏が社長に就任し、自治体向け事業展開を加速する。

ペーパーレス化の逆風

とはいえ、コロナ禍で主力の複合機事業の見通しは厳しい。コロナ禍で柱の複合機事業が大きく影響をうけ、2021年3月期は162億円の営業赤字に落ち込んだ。2022年3月期も営業利益見通しは360億円と、2019年3月期の624億円の約半分。完全回復にはほど遠い。

以前からペーパーレス化で縮小傾向にある複合機事業の収益を補おうと、遺伝子検査事業など新規事業へ積極的に投資してきたが、収益の柱として育ってこなかった。そんな中、自治体向けプラットフォーム事業は一筋の光明だ。この事業への投資額はほかの新規事業の投資額の5分の1以下と、今まで取り組んだ新規事業に比べて圧倒的に低コストで事業を軌道にのせつつある。

2022年3月期は売上高5000億円に達する見込みの複合機などを含むデジタルワークプレイス事業に対し、自治体向け新規事業の売り上げ目標は28億円。同事業の収益性はかなり高いとはいえ、その差は歴然だ。コロナ禍の長期化やペーパーレス化の加速など、コニカミノルタには当面、逆風が吹き続ける。新たな収益柱を確立するうえでも、自治体DXの成否が持つ意味は決して小さくない。

大竹 麗子 東洋経済 記者

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おおたけ・れいこ

1995年東京都生まれ。大学院では大学自治を中心に思想史、教育史を専攻。趣味は、スポーツ応援と高校野球、近代文学など。

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