FIREを目指す人が知るべき「3つの不都合な真実」 38歳で1億円手に入れて引退、後悔した人も

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しかも、日経平均先物は、プロの機関投資家が大半の取引をしており、この利回りはプロの平均的な成績と言えます。4%という利回りは素人投資家がプロと戦って勝つことを意味し、現実的ではありません。

なお、列挙した利回りは税引き前ベースで、そこから所得税や取引手数料を差し引かれるので、実質の利回りは下がります。

さらに、私たちは生活費の支出や非常時に備えて預金を持つ必要があり、資産をすべて運用に回せるわけではありません。「俺は6%で運用しているよ!」という凄腕の個人投資家も、所有資産5000万円のうち6割の3000万円を株で6%で運用しているなら、所有資産に対する利回りは、3.6%(=6%×6割)になるわけです。

「預金取り崩しの恐怖」に耐えられますか?

2つ目の盲点は、「預金取り崩しの恐怖」です。

仮に資産運用の才能があり、4%の利回りを実現できるとしても、それは長期間の平均の話。株は大きく値上がり値下がりするので、ときに利回りが4%を下回り、マイナスになります。つまり、株に投資している限り、生活費などの支出のために運用資産を取り崩すという場面が出てきます。

ここで、「逆にプラスのときもあり、平均ではプラスなんだから、マイナスになったら一時的に取り崩せば済む話」と言い切る専門家がいます。理屈はまったくその通りですが、おそらくこうした専門家は、預金取り崩しの恐怖を経験したことがないのでしょう。

私事ですが、20年前に会社員を辞めてコンサルティング事務所を開業したとき、なかなか受注が増えず、預金を取り崩す生活が7カ月くらい続きました。預金通帳の残高がだんだん減っていくのを見て、「俺はこのまま破産するのか……」と恐怖に身が震えました。妻からは「いつまでこんな生活が続くのよ」と非難され、一時的に夫婦関係も悪化しました。

幸い私の預金取り崩し生活は7ヵ月で終わりましたが、1989年にピークだった日経平均がバブル崩壊後の最安値を2009年に付けた通り、株価下落は5年、10年と続くことだってあります。よほど精神的にタフな人か、ずっと取り崩しを続けても問題ないくらい大きな資産を準備したという人でない限り、預金取り崩しの恐怖からは逃げられないでしょう。

以上2つの点から、専門家が提唱する「4%ルール」はかなり楽観的。保守的に「2%ルール」で年間支出の50倍の資産を用意するか、完全にリタイアせずセミリタイアで勤労収入を獲得するほうがまだ現実的です。

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