河野氏の「年金改革案」に他候補がいら立つ理由 自民総裁選の政策論争の争点に浮上(前編)
一方、経済前提がより厳しい2つのケースでは、将来世代の実質年金額も減少することが見込まれている。
最悪ケースのみに着目する河野氏
端的に言って、河野氏がほかの候補と決定的に違うのは、こうした多数のシナリオに対する受け止め方だ。河野氏は、最悪の経済前提ケースだけにフォーカスし、そこから年金改革の道筋を考えている。かつて厚労省は、「もっと悲観的なシナリオを含めた経済前提ケースでの試算を公表すべきだ」との批判を受け、2014年の年金財政検証からそうした試算を開始した。そして、この悲観的なシナリオでの試算公表を高く評価した1人が河野氏だった。
一方、幅広い経済前提ケースでの試算に対しては、将来予測が難しい中で、悲観的なシナリオも念頭に置きつつ、状況を見ながら一定の幅を持って考えていくのが、河野氏以外の候補者を含めた、一般的なスタンスだろう。
さらに河野氏以外の他の候補者は河野氏とは違って、すでに政府が次のような年金改革案を提示し、それを実施した場合、将来世代の年金給付はどれだけ改善するかという試算も示していることを重視している。
●基礎年金の保険料拠出期間延長(40年→45年)
●現在世代と将来世代の年金の取り分を調整する「マクロ経済スライド」の適用強化
●基礎年金と厚生年金(所得比例部分)のマクロ経済スライド調整期間の一致(低所得者ほど将来給付改善効果が大きい)
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