河野氏の「年金改革案」に他候補がいら立つ理由 自民総裁選の政策論争の争点に浮上(前編)

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こうした改革を実行に移せば、6つの全経済前提ケースで将来の所得代替率や実質年金額は大きく改善することが見込まれ、ケースによっては現在の給付水準を上回る可能性もが示されている。また、個々人の自由選択で年金の受給開始時期を遅らせれば年金額が増える「繰り下げ受給制度」(1カ月遅らせるごとに0.7%増額)というものもあり、政府は高齢期の就労促進とともに繰り下げ受給の広報活動にも力を入れている。

こうした取り組みを考慮すれば、「若い人たちは年金で生活できないので、抜本的改革が必要だ」という河野氏の主張は性急すぎると映るだろう。

一方、上記のような方向が示されているとはいえ、これまでの実際の年金改革の歩みは「一歩ずつ前進」であり、遅い感じは否めない。例えば、非正規雇用への厚生年金適用拡大では外食・小売り業や中小企業が、マクロ経済スライドの適用強化では現在の高齢世代などが反発しているため、政治的には一気に制度変更を進めにくい。これまでの政権は選挙を意識しすぎて、気概の乏しかった面もある。一方で、反対者に対して1つひとつ丁寧に説得していく時間が必要であるということも事実だろう。

他候補者が河野氏に違和感を持つ訳

そうした中、河野氏がこうした取り組みを無視するように「抜本的改革を行わなければ、若者は将来、年金で生活できない」と叫べば、「やっぱりこれまでの政府の改革案はウソだったのか」と国民に不信感を植え付けるのは必至だ。自民党は政務調査会・厚生労働部会を中心としてさまざまな意見を集約して年金改革のコンセンサスを作ってきた。討論会などにおける、河野氏の年金改革案に対する他候補者の批判を見ると、それは河野案の持つ問題点のみならず、「わが道を行く」河野氏の姿勢への違和感も含まれていることが感じられる。

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