自民総裁選で急浮上「決選投票」の大逆転シナリオ 大半の派閥は自主投票、自民史上に残る戦いに
1年前の菅首相と岸田、石破両氏による同じ場面では、秘書官らが作成したとみられる付箋付きのメモの束を読みふける菅氏を真ん中に、左右に分かれた石破、岸田両氏は菅氏を横目に見ながら直接会話も控えていた。しかし、今回は4氏とも互いの字の巧拙を批評しあうなど和気あいあいで、前回とは対照的な雰囲気だった。
もちろん、全国中継のテレビカメラを前にした討論本番では、4候補とも緊張を隠せなかった。とくに、記者クラブ側が目玉としている「候補者同士の討論」は予想外の質問が浴びせられるため、候補者らは身構え、質問者の発言に耳を澄ませた。
年金改革と原発が討論テーマに
候補者同士の討論では1人の候補者が3回、合計12回の質疑・応答を行う。岸田、高市、野田3氏は相次いで河野氏を質問相手に選んだ。テーマは年金改革と原発問題で、いずれも河野氏の主張が他氏と異なるからだ。
河野氏は基礎年金を高齢者の生活の最低保障とするため、財源をすべて税金にする案を提唱している。これに対し、他の3氏は「大幅な増税が必要になる」(岸田氏)、「年金制度に大きなひずみが出る」(高市氏)などと集中攻撃した。
河野氏は持論を曲げなかったが、肝心の増税幅については「独り歩きする」と言葉を濁し、論争は中途半端に終わった。
また、河野氏がかねて主張してきた脱原発についても、3氏がそれぞれの理屈で論争を挑んだ。中でも野田氏は「国民は河野氏に『脱原発』の印象を持っていた」と指摘し、今回の総裁選で原発再稼働を容認した河野氏の「変節」を槍玉にあげた。
しかし、河野氏は「そんなことは言ったことがない。(日本は)緩やかに原子力から離脱すると言っているだけだ」とかわした。岸田氏も核燃料サイクルの見直しに言及した河野氏に「原発再稼働と両立しない」と質したが、論議はかみ合わないままだった。
その後も続く各種討論会でも、決定的対立の場面はほとんどなく、国民の注目は総裁選での得票争いに移っている。大手メディアの票読みがすでにあふれているが、その根拠となるのは党員・党友を対象とした調査と国会議員の支持動向だ。
その中で明らかになりつつあるのは、党員・党友票では「河野氏が大幅リードだが、岸田、高市両氏も一定の支持を集めている」、議員票では「岸田氏が優位で、河野氏と高市氏が追い上げている」との分析だ。
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