自民総裁選で急浮上「決選投票」の大逆転シナリオ 大半の派閥は自主投票、自民史上に残る戦いに

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竹下亘元総務会長の死去で、今回の総裁選は議員票と党員・党友票がそれぞれ382票、合計764票となった。一番の注目は河野氏が1回目の投票で過半数(383票)を獲得できるかだ。

しかし、各種調査はいずれも「河野氏は最大でも320票程度で過半数は見込めない」との想定だ。その場合、12年前と同様、国会議員票で優位な岸田氏が逆転するのかどうかが最大の焦点となる。

多くの調査では、議員票が中心となる決選投票になれば、「派閥の多数派工作が結果を左右する」との見立てで、岸田氏有利を予測する声も多い。しかし、「そんなことになれば衆院選で自民の議席減につながる」との指摘も根強い。

投票直前まで闇情報に右往左往

そうした中、河野氏は20日の党青年局・女性局主催の討論会で突然、「自分が総裁になったら決選投票でも党員・党友の意向が反映するように総裁選改革を実現する」と発言した。これについて党内では「1回戦決着が困難になったことへの焦り」との見方が広がった。

29日の投開票まであと1週間。結束して戦う岸田派を除く各派閥・グループは水面下で熾烈な多数派工作を展開している。衆院当選3回以下の若手有志が結成した「党風一新の会」は派閥の締め付け排除を主張し、党内の流れを変えたが、参加メンバーの支持動向もバラバラとされる。

異端児と言われる河野氏の突破力か。それとも党内に敵の少ない岸田氏の安定感か。さらにはネットでの支持が断然トップの保守派の高市氏が割って入るのか。

29日午後の投票ぎりぎりまで、飛びかう真偽不明の闇情報に自民党議員全員が右往左往する「戦国総裁選」になることは間違いなさそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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