「緊急自動ブレーキ義務化」さらに強化の意味 11月からスタートだが早くも対象拡大が決定
渋滞の中の運転は、集中力を維持しなくてはならず、なかなかつらいものがある。実際、渋滞中の追突事故は多い。けれども、目の前のクルマに正対する低速の渋滞は、衝突被害軽減ブレーキにとって非常に得意なシーンでもある。つまり、衝突被害軽減ブレーキが増えるほどに、渋滞中の追突事故は減る。高速道路の事故渋滞も同じく減るだろう。
ただし、衝突被害軽減ブレーキがあれば、「もうこれでOK」というわけではない。ユーロNCAPをはじめとした世界の自動車アセスメントでは、試験方法をシナリオベースに進化させている。
単純にダミーブロックに真っ直ぐぶつけて安全性能を測るだけではなく、さらに進んで、「交差点を曲がるときに、曲がった先に歩行者がいた場合」といったシナリオで作られた状況での安全性能を試されるのだ。
こうしたシナリオをベースにした新しい試験は、これまでの衝突被害軽減ブレーキのシステムではクリアできないものも多い。そのために、衝突被害軽減ブレーキは、さらなる性能向上が求められる。
ソフトウェア更新で既存車両の機能強化も
これからはソフトウェアのアップデートにより、歩行者や自転車だけでなく、さらに幅広い対象に作動することになるだろう。また、車両の周囲をさらにカバーする追加のレーダーやカメラ、ソナーなどとの連携も行われるはずだ。
最近では、トヨタが販売済み車両を対象とした先進運転支援システムのソフトウェア・アップデートを実施するようになった。同様のサービスは、トヨタだけでなく、他社にも広がってくることだろう。輸入車では、ボルボがすでに導入している。
ちなみにトヨタでは、話題のOTA(オーバー・ジ・エアー)による自動アップデートではなく、ディーラーにて丁寧な説明を伴って、ソフトをアップデートするという。
事故を回避するためには、愛車の衝突被害軽減ブレーキの性能や作動条件などを、オーナーがしっかりと理解する必要がある。そのために説明できるように、店舗で顔を突き合わせてのアップデートとしたいらしい。
こうしたトヨタの姿勢は、安全に対する誠意と言えるだろう。なぜなら、衝突被害軽減ブレーキはしょせん、機械にすぎないからだ。機械である限り、センサーやシステムのエラーをゼロにすることはできない。だからこそ、自動ブレーキは「衝突回避」ではなく、「衝突(したときの)被害(を)軽減(するための)自動ブレーキ」と名乗っているのだ。
あくまでも交通事故を防ぐ主体は、ドライバー。いくら先進運転支援システムが進化しても、運転の主体がドライバーであることは、この先も当分は変わらない。クルマを運転する人間は、そこを勘違いしないことが肝要だ。
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