3気筒エンジンの可能性、各メーカーの現在と未来 走りと快適性、各メーカーで異なる設計思想
前回は、3気筒エンジンが採用されている理由や、その背景、3気筒エンジンの構造や特徴について解説した。今回は、より具体的に3気筒エンジンが見直されている理由と、各メーカーの考え方や採用車種を踏まえて解説していく。まずは、現代の3気筒エンジンの代表的なエンジンとして、フォルクスワーゲンの「新型ゴルフ」から分析していこう。
直列3気筒エンジン車をこれまで試乗した経験も踏まえ、排気量が前型の「ゴルフ7」と比べ200cc少ない1.0Lで、どのような乗り味となるか気掛かりだった。ところがそれは杞憂で、まったく不具合を覚えることなく、いかにも直列3気筒エンジンと思わせる振動や騒音を体感することもなかった。肩透かしでも食わされたように、その仕上がりには驚くばかりだった。
フォルクスワーゲングループジャパン広報によれば、直列3気筒エンジンの振動と騒音対策に、バランスシャフトは使っていないという。では、どのような対策が採られているのか。
フォルクスワーゲンが行った3気筒エンジン対策
新型ゴルフの3気筒エンジンでは、燃費を向上させるため、ミラーサイクルを実現するバルブ制御が行われている。通常のバルブ開閉時期に比べ、吸気バルブを圧縮工程になってもしばらく開けたままとすることにより圧縮比が高くなりすぎないようにし、ノッキングなどの異常燃焼を予防する。そのあとの膨張工程では、ピストンの移動距離をそのまま活かし、圧縮時と膨張時のピストン移動量が異なることを利用して仕事率を高く(入力に比べ出力を大きく)し、燃費を改善しようという策だ。
しかしそれでは、吸気工程で筒内に入った空気を、ピストンが圧縮しているときに吸気バルブがまだ開いていることによって一部を逃がしてしまい、出力が上がらないのではないかと思うだろう。それに対し、ターボチャージャーを使って過給することにより、あらかじめ余分の吸気量を確保しておく。
ターボチャージャーは、ミラーサイクルを採用したことから実現したとされるVTG(可変タービンジオメトリー)ターボチャージャーと呼ばれる機構が用いられている。これは、排気で回されるタービンへ排気を導入する部分に可変式の弁を設け、その開度を変更することで、エンジン回転数が低く排気量が少ない状況でも、勢いよくタービンの羽根に排気が導入され、十分な力を得てコンプレッサーを勢いよく回し、回転数を問わず吸気量を十分に確保する方法だ。身近な例でいえば、息を吐く際に口をすぼめると、少ない呼気でも勢いよく吹くことができるのと同じ発想だ。
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