3気筒エンジンの可能性、各メーカーの現在と未来 走りと快適性、各メーカーで異なる設計思想
日本でも、タービンへの排気導入部分に可変機構を採り入れる手法は1980年代から行われてきた。だが、フォルクスワーゲンのVTGは、タービンの羽根1枚1枚により効果的に排気を導くきめ細かな機構となっている。
ほかにカムシャフトとフライホイールにも、振動を抑える機能が盛り込まれている。カムシャフトのタイミングギアに、直列3気筒エンジンの吸排気バルブが開く時期にあわせ、120度ごとに半径が大きくなる三角おむすび型のような形状(トリオーバル形状)をつけている。これにより、バルブが開く力を必要としたとき、タイミングベルトの張力に力が増し、それによって余計な振動が起きないようにしている。フライホイールには、一部に穴をあけるなどしてわざと単体での調和を崩し、エンジンに取り付けたときに3気筒の振動を打ち消すような働きをする。
最後に、48VのISGによるモーター駆動の補助も、振動抑制を助けているといえるのではないか。直列3気筒エンジンの振動は、低~中速回転で負荷が増えたときに顕著となるので、トルクの立ち上がりが早いモーター効果を使った低い回転でのトルク増加により、弱点を克服しているといえそうだ。
2004年(欧州では2003年)にダウンサイジング過給の構想をフォルクスワーゲンがゴルフで採り入れてから、単に燃費を改善するだけでなく、クルマを日々快適に利用できるように考えたフォルクスワーゲンの長期的技術開発の見識には、深謀遠慮があり、感慨深い。ゴルフが世界の小型車の規範といわれ続ける背景に、そうした視野があることに気づかされる。
3気筒+PHEVという選択をしたボルボ
ボルボ「XC40」のPHEVも、直列3気筒エンジンを採用している。マイルドハイブリッドを含めほかのXC40は、2.0Lの直列4気筒を使うので、直列3気筒はXC40PHEVが初めてだ。このクルマも試乗をすると3気筒であることをほとんど意識させない。
フォルクスワーゲンと違い、ボルボは直列3気筒エンジンにバランスシャフトを採用している。これによって、根本的な振動を抑えているのだろう。
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