軽だけじゃない、小型車でも3気筒が増えている訳 振動や騒音が多いのは昔話、現在の進化を探る

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3気筒のダイナミックフォースエンジンを採用するヤリスのプラットフォーム(写真:トヨタ自動車)

エンジンの合理性から直列3気筒エンジンは、燃費や出力に優れた性能を発揮するとされている。一方、直列3気筒ならではの独特な振動があり、これが快適性に課題を残す場合がある。そのため、3気筒よりも4気筒が採用されてきたという背景がある。

直列4気筒のような偶数の気筒数のエンジンは、等間隔での燃焼が行われると、ある気筒が燃焼しているとき、相対する別の気筒も違う工程ではあるものの、同じ位置(上死点)か、その反対側(下死点)にピストンがあり、互いに上下動の動きを打ち消す働きをする。実際には、混合気を燃やしたときの爆発するような燃焼の勢いと、ほかの工程(圧縮や排気)では、力のかかり具合が異なり、振動は起こるのだが、ピストンの往復運動という点においては調和がとれるといえる。

しかし、奇数となる直列3気筒の場合、1つの気筒のピストンが燃焼工程にあるとき、ほかの2つのピストンは往復運動の中間位置にあり、しかも上昇と下降の別の動きをしているので、エンジンを回しながらゆするような振動を起こす。これが快適さを損ないやすい。自然吸気の軽自動車のエンジンが、プルプルと振動するのを経験したことがあるかもしれない。それが直列3気筒ならではの振動や騒音だ。

3気筒特有の振動や騒音を抑えた現代の技術

これを補うため、バランスシャフトと呼ばれ、エンジン回転と逆に回転する錘の軸を装備することで解消しようとする手立てがある。ほかにクランクシャフト後端にあり、回転を安定させるフライホイールに振動を調整する穴を開けるなどして解消しようという手立てもある。その効果を別の例で説明すると、タイヤをホイールに組み付けたとき、ウェイトと呼ばれる鉛の小片をホイールの内側に取り付け、回転したときに振動が収まるようにするのと似た発想だ。

そのほか、ターボチャージャーによる過給や、モーター駆動を加えることで、エンジンに負荷が大きくかかる運転状況で回転力を補い、余分な振動が出にくいようにすることも効果をあげるようだ。それぞれの対処法をどう使うかは、自動車メーカーの考え方や、直列3気筒エンジンを採用する車種の特徴などによって違ってくる。

日本での販売がはじまったばかりの新型ゴルフ。1.0L 3気筒ターボと、1.5L 4気筒ターボをラインアップする(写真:Volkswagen)

なかでも印象深いのが、フォルクスワーゲン・ゴルフに搭載された1.0Lの直列3気筒ガソリン直噴ターボエンジンだ。48Vのマイルドハイブリッド仕様で、モーター機能付き発電機(ISG/インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)がベルト駆動で組み合わされている。

次回、後編では、実際にフォルクスワーゲンが新型ゴルフで採用した技術に加え、各メーカーの3気筒エンジンの取り組みや対策、その効果などを深堀りしていく。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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