富士通と東芝の携帯電話事業統合は、両社の信用力にプラス《ムーディーズの業界分析》



 アップルのiPhoneなど海外勢との競争の激化と、2007年からの国内通信会社による端末の販売奨励金制度の廃止によって、国内の携帯端末市場は2年連続で平均約20%縮小した。対照的に、日本メーカーのシェアがわずか3%にとどまる世界市場は、今年は10%の成長が見込まれている。

日本の他の大手総合電機メーカーと同様、富士通と東芝は多角化した事業の経営という課題に直面している。東芝は、主として社会インフラと半導体などを手掛け、富士通はITサービス、サーバー/コンピュータ用電子部品、PC/携帯電話等のコンシューマー向け製品などを手掛けている。日本の大手企業は、コアコンピテンシーの強化と低収益事業からの撤退に注力すると同時に、海外新興市場での成長率拡大に照準を合わせている。日本の人口の高齢化という長期的トレンドと、世界的な金融危機以降の国内市場ならびに従来から事業を展開してきた欧米市場の低迷が、この傾向を加速している。

日本の家電業界、電子機器業界、さらに自動車業界も同様に、成熟した国内市場で多数のメーカーが競合するという課題に直面している。携帯端末業界と同様、海外市場で競争するための資源を確保するうえで、国内市場では多くの企業がさらに統合を進める必要があるとみられる。

しかし、今回の統合が必ずしも世界市場で競争力の強い企業を生み出すとは限らない。富士通と東芝の携帯電話事業の統合会社は、シャープ(A2、安定的)に次ぐ国内2位の携帯端末メーカーとなるが、世界市場に占めるシェアは1%に満たず、海外事業において、今回の統合がなかったとしてもいずれ経験していたであろう事業リスクに直面する可能性がある。

(写真:吉野純治)

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