「日本株の上昇はこれからも続く」と見ていいのか TOPIXの年初からの上昇率はNYダウを逆転した

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実際、8月17日の「共産党中央財経委員会」において、「共同富裕」で公平な社会の実現をめざすことが決まったからだ。ポイントは、「過度に多い所得は適切に調整し社会に還元、違法な所得は断固取り締まる」だ。足元、大成功した中国起業家の巨額の寄付が増え始めているのも「共同富裕」を意識した行動だと推測する。

このような流れは少なくとも、5年に1回開催される2022年秋の「中国共産党大会」まで続くとみる。この大会で、党総書記(合議制)のまま5年延長するか、党主席制を導入するかが決まる。党主席制導入を確実なものにするためにも、習近平主席は規制強化などにより「共同富裕」を実現したいのではないだろうか。

TOPIXは中長期上昇でも、当面の上昇は総選挙まで?

日本株全体が今回のように先物主導で株価が上がるときは、日経平均先物などが買われやすく、日経平均とTOPIXとのパフォーマンス格差はつかない。だが、株価が横ばいや下落局面では中国規制強化の悪影響などから、日経平均の方が売られやすいとみるべきだ。私は、中長期では日経平均よりもTOPIXの方が有望とみている。TOPIXは今年の最高値を更新して、やっと中長期上昇トレンドに入ったとみているからだ。

ただ、短期的にはTOPIXや日経平均も調整局面が近づいてきたとみている。当面の焦点は、9月29日の自民党総裁選挙の投開票日と、11月の衆議院選挙の結果(14日、21日、28日のいずれかに実施か)だろう。これらの重要イベントを通過すると、いったん国内政治の大きな変動要因はなくなる可能性があるからだ。

もちろん、国内政治だけで日本の株価が動くわけではない。それよりも影響が大きいのは、アメリカの株価動向だろう。やはり日本株は基本的にアメリカ株の「写真相場」になることが多い。今後も日本の政治を材料に株価が動く可能性はあるものの、それはアメリカ株が、横ばいか、緩やかに上昇することが条件になる。

結局、日本株の動向でカギを握るのは、海外投資家だ。彼らが数週間継続して日本株(現物と先物含む)を買うと、日経平均は上がることが非常に多い。実際、毎週木曜日(祝日がある場合などは除く)に東京証券取引所が発表する海外投資家売買動向をチェックすると、外国人は9月3日まで2週間連続で買い越しなのだ。

おそらく先週(9月6~10日)も大幅な買い越しだった可能性が高いが、この買い越しがいつまで続くのか、需給面では非常に重要になる。海外投資家は、政治の変化や構造改革が大好きだ。この海外投資家の期待にどこまで応えられるのか、引き続き注目したい。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

糸島 孝俊 株式ストラテジスト

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いとしま たかとし / Takatoshi Itoshima

ピクテ・ジャパン株式会社投資戦略部ストラテジスト。シンクタンクのアナリストを経て、日系大手運用会社やヘッジファンドなどのファンドマネジャーに従事。運用経験通算21年。最優秀ファンド賞3回・優秀ファンド賞2回の受賞歴を誇る日本株ファンドの運用経験を持つ。ピクテではストラテジストとして国内中心に主要国株式までカバー。日経CNBC「昼エクスプレス」は隔週月曜日、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、BSテレビ東京「日経ニュースプラス9」、ストックボイス、ラジオNIKKEIなどにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、国際公認投資アナリスト(CIIA)、国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

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