「日本株の上昇はこれからも続く」と見ていいのか TOPIXの年初からの上昇率はNYダウを逆転した

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すでにTOPIXの年初からの上昇率はNYダウを逆転、日本株の出遅れは一気に解消された(9月10日現在でTOPIXは16.5%上昇、ダウは同14.5%)。

一方、日経平均は若干だがNYダウの上昇率に追いついていない。実は5月末までは、日経平均とTOPIXは、ほぼ同じ値動きをしていた。だが6月から直近まで約5%ポイントの格差が生じている(9月10日現在)。このように、日経平均がTOPIXに出遅れている理由は①6月以降、日経平均の値動きを左右する「値ガサ株(ソフトバンクグループなど)」が中国の規制強化の悪影響を受けている、②3月からの下落局面で日銀が日経平均型のETFを買わなくなったから、とみている。なかでも①の中国の規制強化の悪影響が大きい。

中国の規制強化の悪影響とは?

では、中国の規制強化とは、具体的にどのようなものか?主な事例を7つあげよう。①まずネット通販大手のアリババ集団だ。2020年11月に傘下の金融会社アントグループのアメリカでのIPO(新規株式公開)が延期となり、2021年4月には独占禁止法違反で182億元(約3000億円)の罰金支払い命令を受けた②出前アプリ最大手の「美団(メイチュアン)」は4月に独占禁止法違反の疑いで当局が調査を開始③ネット大手の「テンセント」は7月に音楽配信会社買収に関連して、独占禁止法違反で処分され、傘下のゲーム動画配信会社の経営統合も差し止めに④配車アプリ最大手の「滴滴出行(ディディ)」は7月に国家安全上の理由で審査が開始され、アプリのダウンロードが停止となった。

さらに⑤規制強化対象が教育業界まで広がり、既存の学習塾は7月に利益を上げてはいけない非営利団体として登記された。⑥ゲーム会社では7~8月に18歳未満のネットゲーム利用は週末・祝日1日1時間とすると発表⑦芸能界でも8~9月に有名女優の脱税を摘発するなど、芸能界に対し厳格な規制を発表した。

こうした①~⑦の規制強化は、中国全体の景気を減速させるリスクもあり、大手民間企業の稼ぐ力を弱くする可能性も高まる。今後も規制対象が広がるか、注視したい。

現在のところ、中国の規制強化について、マーケット参加者や経営者の間では、楽観的な見通しが大勢をしめるかもしれない。だが、このような中国企業とビジネスをしている日本企業は大いに注意すべきだと考えている。できれば、個別企業の中国リスクの取り方・考え方や中国ビジネスのしくみ・中身を今一度しっかりチェックして欲しい。日経平均の採用銘柄で指数の株価変動に影響しやすい値ガサ株には、中国関連銘柄が多いからだ。

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