日本人は遠隔医療が進まない事の損失を知らない 世界で爆発的に広がる実態を知っていますか

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初診原則は、コロナ禍で緩和された。2020年4月10日、初診からのオンライン診療が「時限的・特例的」に解禁された。風邪や新型コロナについても、オンラインでの保険診療が当分認められることとなった。

政府は2021年6月18日に閣議決定した規制改革実施計画で、かかりつけ医による初診からのオンライン診療を2022年度から恒久的に認める方針を示した。

しかし、「かかりつけ医で初診」というのは、実際にはほとんどないケースだろう。これでは、事実上、初診のオンライン診療を、再び禁止したに等しいと思う。

なぜ医師会が反対するのか?

表向きいわれているのは、遠隔医療の安全性、医療事故時の責任の所在などだ。もちろん、そうした問題を無視するわけにはいかない。しかし、諸外国では、技術によってそうした問題を克服しつつあるのだ。

反対する本当の理由は、患者を大病院に取られてしまうことと、診療報酬体系で遠隔医療が低いことだろうと推測する。

診療報酬体系については、2021年8月に引き上げがなされた。多くの患者は、遠隔のほうが利便性は高いのだから、逆に高くなってもよいと考えているはずだ。

また、患者を大病院に取られるというが、地域医師が分担する度合いは大きいはずだ。

実際、アメリカで遠隔医療が急速に普及したのは、医師の診療時間が短くなり、従来よりも多くの患者を診ることができ、医師の収入が安定化されるためだという。

遠隔医療は高齢化時代の最も重要なインフラ

多くの企業が在宅勤務を認めるようになったので、大都市ではなくて生活環境の良いところに住みたいと思う人もいるだろう。しかし医療がネックになる。在宅勤務をさらに広げるにも、遠隔医療は必要だ。

また、高齢化社会では、高齢化や医師・介護人材の不足問題への対処がますます緊急な課題となる。遠隔医療は、高齢化社会の最も重要なインフラストラクチャーだ。

「先進国の状況がうらやましい」と述べた。しかし、指をくわえて眺めているだけでは、何も変わらない。

現状を変えるのは、人々の要求だ。遠隔医療を日本で広げるには、それに対する要求が強まることが必要だ。そのためにも、先進国で何が行われているかを知る必要がある。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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