中国政府が濫用、「内政干渉」がはらむ深刻な問題 議論を封じ込め、国際社会との対話も回避

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こうしてみると中国やロシアばかりが目立つが、核開発を進めているイランが制裁を続けるアメリカに対し、「内政干渉をやめるべきだ」と主張するなど、世界中でこの便利な言葉が濫用されている。

日本も例外ではなく、小泉首相の靖国神社参拝を中国や韓国が批判すると、やはり「内政干渉だ」という反発が出た。

つまり本来の建設的な意味での内政不干渉の原則は脇に置かれ、都合の悪いことを正当化する手段としてこの言葉が広く使われているのである。しかし、やはり一番目立つのが中国である。そしてその使い方にはいくつかのパターンがある。

内政干渉という自己防衛策

まず自分たちの立場を守るための受動的な使い方である。中国は経済面では西側の市場経済を取り入れているが、政治は共産党一党支配という民主主義とはかけ離れたシステムとなっている。その結果、選挙制度や人権問題など多くの面で国際社会のルールや価値観とは大きくかけ離れている。

したがって欧米諸国がウイグルの人権問題や香港の民主化運動の弾圧などを非難すると、事実関係を説明して反論することができず、内政干渉という言葉を持ち出して自己防衛するしかない。

これは習近平国家主席になって始まったことではなく、1990年代に江沢民国家主席も「人権問題は本質的に各国の主権の範囲の問題で、各国がそれぞれ違う観点を持っている。人権の名を借りて他国に内政干渉をしてはならない」と述べている。欧米からの批判に対し、説明をして理解を得ることができない以上、内政干渉だとはねつけるしか方法がないのである。

次が発展途上国などを相手に外交空間を広げるための積極的な使い方だ。一帯一路政策が典型的だが、中国は潤沢な資金と労働力を武器にアジアや東欧、アフリカなどの発展途上国に活発な融資を進め、影響力を増している。

欧米諸国の経済援助は人権問題をクリアするなど厳格な基準が設けられているが、中国は相手国が独裁国家であろうが人権問題があろうが関係なく資金提供しており、途上国側からするとありがたい存在となっている。

その際、持ち出されるのが内政不干渉の原則だ。つまり中国は相手国の政権がどういう政策をやっていようが問題にしないで資金提供するというのである。

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