アマゾンの「残酷ノルマ」取り締まる新法の衝撃 カリフォルニア州がノルマの上限を設ける動き

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業界団体は、多額の訴訟コストにつながり、業界全体の足かせになるとして法案に強く反対してきたが、この法案は主にアマゾンという1つの会社の労働慣行の是正を目的としている。

アマゾンは法案についてコメントせず、作業ノルマはそれぞれの従業員の経験に応じて個別に調整されており、従業員の健康と安全にも配慮したものになっていると述べた。ノルマ未達に関連した解雇は全体の1%にも満たないと強調している。

法案は、従業員と規制当局に対する作業ノルマの開示をアマゾンなどの倉庫事業者に義務付けるもの。必要な休憩が取れなくなったり、安全規則が守れなくなったりするようなノルマが存在する場合には、従業員は撤廃を求めて訴訟を起こせるようになる。

アマゾン倉庫の労災は競合他社の2倍

アマゾンの事業運営にどこまで大きな影響を与えることになるのかは、はっきりしない。ただ、時間当たりのノルマに上限が課せられるようになれば、翌日・即日配送の処理能力以前に、まず経費上昇という形で影響を受けることになるだろう。

「処理能力ではなく、すべては金の問題になると思う」と物流コンサルティング会社MWPVLインターナショナルのマーク・ウルフラート社長は話す。「『時間当たりのノルマを350から300に下げろ』という話になったら、私はこう言うだろう。『オーケー、それなら作業員の数を増やさないと。100人じゃなくて120人にする必要があるかな』」。

4つの労働組合が支援するストラテジック・オーガナイジング・センターの報告によると、アメリカのアマゾンでは倉庫作業員が深刻なケガを負う確率は昨年、ほかの倉庫業界各社の2倍近くになっていた。

昨年12月に辞めるまでカリフォルニア州にあるアマゾン倉庫で3年以上働き、商品のピッキングや梱包を担当していたネイサン・モリンさんが証言する。「会社からは『足元から向きを変えて、決して体をひねらないように』といったような作業手順が示されてはいた。しかし、正しい体の動かし方を守っていたらノルマは達成不可能、という場面が多かった」。

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