仏教に学ぶ「自分さえ自分の頼りにならない」真理 好ましくない変化は認めないという心が間違い

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男はもちろん帰れませんから、「だめだめ、家に帰ったら殺されます。私は行きません。ここで産みなさい」と言いました。すると彼女は、1人で家に帰ろうとして家出をしてしまったのです。やさしい男は、彼女を守らなくてはいけないと思い、追いかけます。

途中の森の中で、彼女は、贅沢な娘には似合わず誰の手伝いもない状態で、どうにか子どもを産みました。子どもを産んだら、もう家に帰っても意味がありません。それで男のところに戻ることにしました。

頼りにしていた夫が死に、子ども、赤ん坊も死んだ

その後、娘はまた妊娠しました。出産が近づいたころ、娘は、前と同じようにお母さんのところへ行こうとして逃げてしまいました。男は「1人で行ったら危ないし、かわいそうだ」と、また探しに行きました。森の真ん中で娘を見つけたときには、もうすっかり夜でした。

そこに猛烈な雨が降ってきたのです。さらに、彼女に陣痛が始まりました。男は「たいへんだ。なんとか雨に濡れないように屋根をつくってあげよう」と言って、葉っぱか何かを取りに行きました。そしてその途中で、なんと蛇に咬(か)まれて死んでしまったのです。

彼女は男を待っていましたが、ぜんぜん戻ってこない。それで仕方なく、土砂降りの雨の中、血まみれで寒さに震えながら子どもを産みました。

娘は、真っ暗で危険な森の中で、なんとか両手、両足で動物みたいに子ども2人を守って、「あいつは逃げたかもしれない」と男の悪口を言いながら、朝まで寝ずに待っていたのです。

ところが朝起きてみたら、そこで旦那が死んでいたのです。激しいショックを受けましたが、ここにはもう頼れる人はいません。娘はこのまま家に帰ろうと思いました。

帰るためには川を渡る必要がありましたが、ゆうべの雨のせいでまるで洪水です。そこで娘が考えたのは、2人を別々に運ぶことでした。上の子に「あなたはここで待っていなさい」と言って、まず自分が赤ちゃんを抱っこして川を渡ります。それで対岸の葉っぱの上に生まれたばかりの子どもを置いて、上の子を迎えに戻るという計画でした。

ところが、下の子を対岸に置いて川の真ん中あたりまで戻ったところで、娘は大きな鷲が赤ちゃんを狙っていることに気づきました。鳥より速く戻るのは絶対に無理ですから、彼女は大きな声を出して手をたたいて、鳥をおびき寄せようとしました。

ところが、その叫び声を聞いた上の小さな男の子が「あっ、お母さんが呼んでる」と勘違いして水に入り、あっという間に流されてしまったのです。そして後ろを振り返れば、鳥が下の子どもを捕まえて持っていってしまっています。

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