「高速バスの新路線」がコロナ禍でも増える理由 高速道路の新規開通を「好機」として狙う

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この8月には、ほかにも開通が遅れていた中部横断道の静岡県と山梨県を結ぶ区間がようやく開通し、清水と甲府の間が高速道路で直接結ばれるようになった。

それに合わせ、もともと路線があったものの運休中だった静岡-甲府間の高速バスが、土日限定ながら新規開通区間を走行する形で復活。両都市の所要時間が、これまでより15分短縮され、1時間55分となった。

中部横断道は中央道「双葉JCT」と新東名「新清水JCT」、東名高速「清水JCT」を結ぶ(写真:kjn / PIXTA)

これは、同じ区間をほぼ並走するJRの特急「ワイドビューふじかわ」(静岡―富士―甲府間1日5往復)より20分程度早い。そのうえ、特急料金が必要なJRに比べ運賃も6割程度と、時間・経費ともに高速バスが有利となっている。なお、山梨側の始発・終着は、甲府の先の竜王駅、運行は山梨交通と静岡鉄道の2社が往復1便ずつを担当している。

高速道路の新規開通に合わせて再開する路線は、ほかにもある。

今年7月には、コロナウイルスによる利用者の減少で運休していた仙台―釜石線(岩手県交通が運行)が、3月の三陸沿岸道路の気仙沼付近の全線開通を機に、ルートを東北道から三陸沿岸道路に振り替えて、所要時間を30分以上短縮して再開にこぎつけている。

仙台―釜石間も鉄道はつながっているが、直行はできないため、乗り換え不要で仙台市の中心部と釜石を結ぶバスは、利便性が高いと思われる。

コロナ禍でも新路線を開拓するたくましさ

この1年半、高速バスは航空路線や鉄道の長距離路線と同じく乗客が激減し、長期間休止を余儀なくされたり、すでに廃止となった路線も少なくない。そんな中で、高速道路の開通を好機と捉え、積極的に路線を開拓するバス会社のたくましさは目をみはるものがある。

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高速道路の開通とは直接関係ないが、今年4月には、兵庫姫路市の住宅街をこまめに回って通勤客などを拾い、高速道路で一気に神戸市(三宮および神戸空港)へ運ぶ神姫バスの「らっきゃライナー」(「らっきゃ」は播州地方の言葉で「良い」などの意味)の運行を社会実験として開始したのも、バス会社の生き残り策として注目される取り組みである。

また、同じくこの春開業した、外環道を利用して松戸駅と三井アウトレットパーク木更津を結ぶバスや、鉄道の駅がない茨城県境町と東京駅を直行で結ぶバス(今年7月に開業)など、コロナ禍においても特色ある路線の開通が目を惹く。

コロナウイルスの感染拡大がいつ収束するのか見通せず、新たに開通した路線も順調に客足を伸ばすとは限らないが、並行する鉄道との共存共栄も意識しながら、地域の足として定着してほしいと願う。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、高崎経済大学特任教授、京都光華女子大学教授を歴任し、現職。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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