「フェアレディZ」がレトロモダンになった理由 デザイン部門トップの記憶と「GT-R」の存在

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そして、レーシングドライバーにも検討に加わってもらい、デザインやパッケージングを煮詰めたうえで、“見た目でも楽しめる空間”を作り上げた。たしかに、歴史を知るものにとっては懐かしく、若い人たちには新鮮な空間になっていると感じられる。

プロトタイプとの違いは、シルバーのアクセントがブラックに代わり、シフトレバー周辺にスイッチが追加された程度で、大きく変わらない。インテリアカラーはグラファイトとレッド、ブルーの3色を用意。限定生産のプロトスペックでは、インパネのステッチなどのアクセントにイエローを起用した。

シフトノブのブーツにもステッチが入る(写真:日産自動車)

昨年、お披露目したプロトタイプがこの配色だったので、プロトスペックと名付けたのだろう。ただしイエローの使い方はプロトタイプとは異なっている。

「GT-R」のノウハウを生かしたというシートは、肩の部分までサイドが張り出し、背もたれとヘッドレストの一体感が強い。ラグジュアリーな印象も抱いた現行型のシートより、初代を思わせるスポーティな形状だ。

ラゲッジスペースへは、初代以来の伝統である大きなリアゲートからアクセスする。歴代Zは、スポーツカーとしては高い実用性も評価されており、新型もその美点を受け継いだ格好だ。

内部には、現行型も装備しているアルミの補強バーが入っていて、リアウインドー越しに見えるようになっている。

GT-Rがあるからこその立ち位置

エンジンは、「スカイライン」の高性能版「400R」と基本的に共通だ。最高出力400psを発生する3.0リッターV型6気筒ツインターボで、6速マニュアルおよび9速オートマティックのトランスミッションを搭載。後輪を駆動することが明らかになっている。

3.0リッターターボの「VR30DDTT型」エンジン(写真:日産自動車)

V6エンジンを積む後輪駆動であることは現行型と変わらず、プラットフォームも継承していることを考えると、Zの立ち位置はトラディショナルなスポーツカーとなる。日産は、モダンなスーパーカーとしてGT-Rを持っているのだから、なおさらだ。

だからこそ、新型Zのデザインがオーセンティック方向を目指したのは納得である。

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森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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