中国の天津市政府が、同市の(国有資産監督管理委員会の管轄下にある)国有企業に対して通達を出し、情報システムのデータを市政府が指定する共通のクラウドプラットフォームに移すよう求めたことがわかった。指定の事業者以外が提供するクラウドサービスの利用は禁止される。
通達によれば、共通クラウドは「天津国資雲科技」という企業が提供する。財新記者が同社に問い合わせたところ、2022年9月末までに国有企業のデータを(同社が構築・提供する)「国資雲(国資クラウド)」に移行させる市政府の計画について事実だと認めた。なお、同社は天津市国有資産監督管理委員会の全額出資で2021年3月に設立された。
この政策が実施されると、天津市の国有企業がクラウドコンピューティング、クラウドセキュリティ、仮想デスクトップ、電子伝票システムなどのサービスを利用する場合、すべて天津国資雲科技と契約を結ばなければならなくなる。
中国政府は基幹産業の情報システムの国産化を進めているが、クラウドプラットフォームの共通化はこれまで要求していなかった。天津市政府はその狙いについて、国有企業が所有するデータ資産の一元管理やセキュリティを強化するためとしている。
天津市国有資産監督管理委員会は、国有企業の保有データは国有資産であり、国有資産の管理監督部門によって一元管理されるべきであるとの見解を示している。天津市の国有企業は今後、(自前の)データセンターを新設したりサーバーを購入したりすることは原則禁じられる。
四川省や重慶市でも共通クラウドに移行
中国の代表的なクラウドサービスには、電子商取引(EC)最大手の阿里巴巴集団(アリババ)傘下の「阿里雲(アリババクラウド)」、ネットサービス大手の騰訊控股(テンセント)傘下の「騰訊雲(テンセントクラウド)」、国有通信2位の中国電信(チャイナテレコム)傘下の「天翼クラウド」などがある。天津市の国有企業は、これらのクラウドサービスとは新規契約のみならず、既存の契約の更新もできなくなる。
実は天津市に先んじて、四川省や重慶市でも国有企業向けの政府系共通クラウドの構築計画が進んでいる。注目に値するのは、それらのクラウドが(システムのバックエンドでは)外部の大手クラウドサービスを利用していることだ。
例えば四川省の共通クラウドの公式サイトによれば、同省の国有資産監督管理委員会は、直系の投資会社である四川能投集団の傘下企業に共通クラウドの構築を委任。そしてその企業は、(共通クラウド構築の)技術的ソリューションの提供をアリババクラウドから受けている。
(財新記者:何書静、張爾弛)
※原文の配信は8月28日
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