スウェーデンの商用車大手のボルボ・グループは、大型トラックの製造を手掛ける中国メーカーの江鈴重型汽車を買収する。8月23日、この買収について江鈴重型汽車の親会社の江鈴汽車と合意したと発表した。買収額は7億8000万元(約132億円)。なお、買収手続きは関係当局の認可を待たなければならない。
ボルボ・グループの主力製品はトラック、バス、建設機械などだ。かつては乗用車も手がけていたが、乗用車部門のボルボ・カーズは(1999年にアメリカ自動車大手のフォード・モーターに売却され、その後)2010年に中国の中堅自動車メーカーの吉利控股集団(ジーリー)の傘下に入った。吉利控股集団はボルボ・グループの大株主でもある。
今回ボルボ・グループが買収を決めた江鈴重型汽車は、もともとは国有中堅自動車メーカーの長安汽車集団の傘下企業だった。2013年にそれを江鈴汽車が買収し、社名を江鈴重型汽車に変更した。
しかし同社の業績は振るわず、2020年は売上高6億9900万元(約118億円)に対して5億2000万元(約88億円)の純損失を計上。純資産はマイナス4億7000万元(約80億円)の債務超過に陥った。
そんななか、親会社の江鈴汽車は2021年1月に11億4200万元(約193億円)の増資を引き受けて江鈴重型汽車の債務超過を解消。同年5月には江鈴重型汽車の株式を競売にかけると発表し、その時点の純資産の評価額を7億6400万元(約129億円)と説明していた。江鈴汽車によれば、競売の発表時点で江鈴重型汽車はすでに生産・販売を停止していたという。
中国政府の外資規制撤廃がきっかけ
今回の買収により、江鈴重型汽車はボルボ・グループの100%出資子会社となる。ボルボ・グループは江鈴重型汽車(の土地建物や生産設備など)をベースに大型トラックの生産拠点を中国に立ち上げ、2022年末からボルボ・ブランドのトラックの現地生産を始める計画だ。
ボルボ・グループが(中国企業との合弁ではなく)100%出資でトラック工場を建設する背景には、中国政府が2020年に商用車の現地生産に関する外資の投資規制を撤廃したことがある。
それをきっかけに、海外の大手商用車メーカーは対中投資を続々と拡大している。例えば、韓国の現代自動車(ヒュンダイ)は2020年1月、南駿汽車集団との合弁会社だった四川現代汽車への出資比率を50%から100%に引き上げた。同年11月には、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)傘下のスカニアが、江蘇省に100%出資の大型トラック工場を建設して2022年から生産を始める計画を明らかにした。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は8月24日
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