佐々木則夫・東芝社長--延長線上で考えずに発想変えて挑戦していく
社長就任から1年。2501億円の営業赤字(2009年3月期)から一転、10年3月期には1171億円の営業黒字にV字回復させた。ただし、これは4300億円に上る固定費削減が主因。真の復活のためには成長戦略が欠かせない。半導体のNAND型フラッシュメモリ(以後、NAND)と原子力発電という2大事業がエンジン役だが、国の支援を受ける韓国勢が躍進を遂げている。東芝は今後どう戦うのか--。佐々木則夫社長に聞いた。
--成長機会は海外に求めていくと思いますが、東芝がライバル視、ベンチマークとしている海外企業はどこですか。
重電ではシーメンス、半導体やテレビなどはサムスン電子。原子力ではフランスのアレバがいますが、特殊な会社なのでベンチマークとしてはふさわしくない。主に2社を研究しながら、どうやって対処していくかを考えています。
--開発思想という面で、最近特に存在感を増しているアップルやグーグルといった企業を、どう思われますか。ソニーはグーグルとテレビで提携しましたね。
グーグルは、われわれとビジネス形態が違うため、アライアンスなどをやっていく相手です。ソニーさんと同じようなことはやりますし、今いろんなことを考えています。
アップルは、オリジナリティで勝負してきて、今、時代の先頭に立っている。東芝はかつてダイナブックで、世界で初めてノートパソコンを出し、一時シェアも世界一でした。が、ポートフォリオが古くなっているのかもしれない。
--東芝も含めて日本企業はなぜ、アイフォーンやアイパッドを開発できなかったのでしょう。
延長線上で全部考えるからです。今のパソコンや携帯電話にどういう機能を足そうか、とか考えていたから負けてしまう。つまり、最軽量や最薄といったことを追求した結果、いちばん薄いけど高コストの製品を作ってしまった。そこは反省しており、発想を変えてチャレンジしていく。