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コロナ下の株高を説明する最新経済理論のツボ 行動経済学が明かす意識への刷り込みのパワー

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  • 伊藤 元重 東京大学名誉教授、学習院大学国際社会科学部教授
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コロナ禍にもかかわらず株価が非常に高いという現状を、効率的市場仮説で説明しようとすれば超低金利ということになる。しかし、この株価を金利だけで説明するのは苦しい面もある。そこで行動経済学の中で提起されている1つの見方を紹介してみたい。

1つの意識が別の行動にも影響を及ぼす

ある研究者によって、次のような実験が行われた。部屋に集めた参加者たちに紙を配り、自分の携帯電話の番号の下2桁を書いてもらう。00から99までの番号だ。そのうえで、ワインを1本出して参加者に値段をつけてもらう。値段は100ドル以下であり、最も高い価格を出した参加者がその価格でワインを買い取ることができるという単純なオークションだ。

驚くべきことに、その結果を見ると、下2桁の番号が高い人ほど高い価格をワインにつける傾向が顕著であったという。同じ実験をいろいろなところで行ったが、同じような結果が出たという。こうした結果をどう評価したらよいのだろうか。

携帯電話の下2桁の番号は、ワインへの評価とは明らかに関係ない数字だ。しかし、実際に2桁の番号を紙に書いてしまうと、その数字が頭の中に定着してしまうようだ。刷り込みと言ってもよいかもしれない。それがワインへの入札価格にまで影響するということだ。

こうした行為は合理的であるとはとても言えないが、人間の行動としては何となくわかる気がする。行動経済学では同じような実験が世界のいろいろなところで行われており、このようなオークションでもあちこちで同じような結果が出たという。

心理学者のダン・アリエリーは、こうした現象を恣意の一貫性と呼んだ。たとえ最初の「価格」が恣意的でも、それがいったんわれわれの意識に定着すると、現在の価格だけでなく未来の価格まで決定づけられるというのだ。

資産価格にもそうした面がある。株価が急速に上昇を続けたときには、「実体経済が悪いのに本当にこんなに株価が上がって大丈夫なのか」と多くの人が不安を感じた。高い株価に慣れていなかったからだ。

しかし、3万円近い株価が続くと、それが当たり前のように感じられてしまう。要するに「高い」価格に慣れてしまうのだ。

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【円安感・円高感も根っこは株価と同じ】

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