プロアマ出場!ギャラリー前では絶好調

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ファッションデザイナー/コシノヒロコ

 ゴルフは何とも奥深いスポーツで、たとえばグリーンに出てラウンドすれば、その人の本質や、強みや弱み、人間性といったものがそのまま表れるものです。逆に言えば、4~5時間の中で自分自身を表現する機会でもあります。ゴルフはただものではないなぁと思うゆえんです。

5月20日、中京テレビ・ブリヂストンレディスオープンのプロアマ大会に出場しました。滑り出しはなかなか快調だったものの、真夏のような日差しと湿度とで疲れが出てしまい、個人的には鳴かず飛ばずのまま最終18ホールへ。パーで上がることができればスコアはなんとか100。ところが暑さと疲労とでぐったりしていて、気力が残っていません。2打目でバンカーに入ってしまい、挽回しようと思った3打目では飛ばし過ぎてグリーンのエッジへ。もうアカン、絶体絶命。だけど、ここであきらめるわけにはいかない。
 私の強みが最大限に表れるのは、実はこういうときです。ギャラリーのいないホールでは不調でも、たくさんの人が待つ最終ホールでは火事場の馬鹿力が最高潮に達します。この日も奇跡のチップインパーでフィニッシュ、拍手喝采を浴びることに。やはりゴルフはあきらめたらおしまいです。

思い起こせば、ゴルフを始めてからまだ1年目のこと。日本でトップクラスのトーナメントのプロアマ大会に出場、当時乗りに乗っていた憧れのヒューバート・グリーンと一緒にラウンドする機会がありました。人気のプレイヤーなので、スタートからギャラリーは超満員。こんな状況で打つなど、もちろん生まれて初めてです。皆さん向こうを向いていてください、などと言うわけにもいかず、「えいままよ」とクラブを振ったところ、ボールはきれいにフェアウェーへ。女性の出場者は私が初めて、しかもその大会唯一の女性プレイヤーだったため、ギャラリーの皆さんから大喝采をいただき、上機嫌でのスタートでした。

ところが、その後17ホールまでは最悪の出来、ヒューバートに付いていたカメラマンからは「もっと練習してからグリーンに出ろ」と言われる始末。それなのに最終ホールではまたきれいにグリーンに乗せ、1パットでホールアウトです。人前に出たときだけ絶好調とは、われながら何たることだろうとあきれるやら感心するやら。しかも私たちのチームが優勝してしまいました。初心者のときのこの経験があったから、乗りやすい私はゴルフにのめりこんでしまったのかもしれません。

しかし考えてみれば、ゴルフに限らず長唄三味線の演奏でも講演会でも、本番に強いのは昔からのこと。ヒューバートとラウンドしたときはまぐれだったにせよ、その後の勝負強さは日頃の鍛錬という裏打ちがあってこそのものだと思っています。本番で最大限の力を発揮するためには、普段からの地道な努力が必要不可欠。それをあらためて肝に銘じた初夏の一日でした。

ファッションデザイナー/コシノヒロコ(こしの・ひろこ)
大阪・岸和田生まれ。文化服装学院在学中よりキャリアを重ね、東京、ローマ、上海、ソウルなどでコレクションを発表、2009年からは17年ぶりにパリコレクションも再開。近年は書画作品の展覧会も多数開催している。1997年第15回毎日ファッション大賞受賞、01年大阪芸術賞受賞。
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