東京に「野戦病院」が絶対必要なのに進まない事情

及び腰な小池知事に都医師会長がぶつけた本音

キレ気味の尾﨑会長の口調に、小池知事も負けていない。

「場所はあなたに言われることではなく、私たちが決めること」

険悪なまま電話は切れたが、小池知事も相当追い込まれているのだなと、尾﨑会長は思った。

そして、その直後に小池知事は田村厚労相と面会し、知事と厚労相は夕方の会見で都内の医療機関に対して協力を要請することを表明した。コロナ感染者の受け入れや人材の派遣などの要請で、応じない場合は病院名を公表するという。案の定、"野戦病院"については、触れなかった。

8月26日、北多摩南部保健医療圏(武蔵野、三鷹、府中、調布、小金井、狛江の6市)が各市長の連名で、「二次保健医療圏内の臨時医療施設開設に関する緊急要望」を都庁に持参した。その中心的な役割を担う調布市の長友貴樹市長と尾﨑会長とは、電話やメールでやりとりをする仲だ。この要請についても、相談を受けてきた。

北多摩南部医療圏には、「味の素スタジアム」と、「武蔵野の森総合スポーツプラザ」がある。長友市長によると、「臨時医療施設としては格好の場所で、野戦病院に限定せず、酸素ステーションでも抗体カクテル療法ができる施設でもいい。自宅療養者を救うためだが、都からは『取り組むとしてもいちばんの課題は人材の確保だ』との指摘があった」と話す。

「人材は何とかする」は都知事には届かず

尾﨑会長が、小池都知事からの電話の際、味の素スタジアムなどの具体名を挙げたのは、長友市長から後押しを頼まれていたからだ。

8月27日、小池知事は会見でこの6市長の要請について問われ、こう答えている。

「それぞれの地区の医師会の方と連携して、まず人を集めてもらわないと進みません。会場の問題というよりは、人の問題だということを、改めて皆さんと意識共有したいと思いますし、(中略)要は、箱ではなくて人だということです」

「人材は何とかする」との尾﨑会長の言葉は、届いてはいないようだ。

医師会というのは開業医の団体だ。お題目のように「国民医療のため」と唱えながらも、一義的には開業医の利益を損ねることには反対する。そういう医師会を批判的に取り上げてきた筆者だが、尾﨑会長の振る舞いは開業医の利益だけを考えているとは思えない。

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