ECBの量的緩和縮小が急浮上、ユーロ相場への影響 QEを9月から縮小、来年3月末までに撤退終了も
景気に関するスタッフ見通しが改善していることはもとより、そもそもPEPPの購入ペースが「a significantly higher pace」と設定された今年3月時点はアメリカ10年金利を筆頭に世界的な金利上昇圧力があった。これを抑制するためにPEPPを使ったのであり、あくまで「量」は手段、達成すべきは「安定した資金調達環境(financial conditions)」という建て付けであった。
既に域内金利情勢は3月以前の水準に戻っている(下図)。既にPEPPの購入ペースが減速している中でも金利環境が安定しているのだから、無理に「量」を追求する理由はない。ビルロワドガロー仏中銀総裁の「こうした資金調達環境の改善を考慮すべきだ」との発言は正論だ。
片や、アメリカ金利は3月からピークアウトしているが、ユーロ圏金利ほど押し下げられているわけではない。その結果、欧米金利差拡大も手伝ってユーロの対ドル相場も軟化傾向にあり、ECBにとっては通貨高を念頭にした「量」の追求も必要がなくなっている。購入ペースの減速を検討できる好機であるのは確かだろう。
インフレ期待も修復済み
また、クノット・オランダ中銀総裁は「PEPPには明確に定義された目的がある。新型コロナウイルス感染拡大がインフレ見通しに与えたダメージの修復だ」とし、その目的の達成が近いとの見解も示している。この点、ECBが伝統的に重視する市場ベースのインフレ期待(5年先5年物インフレスワップフォワード)は完全にコロナ以前を復元している(下図)。
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