これらの対策に対して、専門部署や知識のある人材が足りない病院では、患者用ネット環境の整備が難しいのが実情のようだ。
このアンケートの中で、患者用ネット環境を整備したことで、どういったプラスの効果があったかを聞いたところ、
「ターミナル(終末期)の患者さんから、やりたい仕事ができたと喜ばれた」
「慢性期病棟の長期入院で家族と面会できなかった患者さんがオンライン面会することができて喜んでいた」
「快適な妊娠生活を過ごすための母親学級で資料動画を提供することができ、妊婦さんの不安解消につながった」
「コロナ禍で立ち合い出産や面会を制限している中で、オンライン面会で赤ちゃんの顔を見せることができた」
「外来患者の待ち時間中の過ごし方の幅が広がった。入院患者についてはテレビの視聴が減っているようだ」
などの声があった。
こうした反面で、患者用ネット環境の運用面での問題点も浮き彫りになった。患者用ネット環境を整備したものの、患者から、「つながりにくい」「速度が遅い」といった苦情が押し寄せ、職員が対応に苦慮しているとの報告があった。また高齢者のオンライン面会で機器を操作するために職員が立ち会うことになり、人員のやりくりが大変だといった意見も寄せられた。
補助金の申請期限延長や使い勝手改善を要望
全国の病院に患者用Wi-Fi環境整備を推進しようと民間人が立ち上がり、手弁当で活動を続けている。「#病室WiFi協議会」だ。フジテレビの情報番組「情報プレゼンター とくダネ!」(1999年4月~2021年3月)でアナウンサーを長く務めていた笠井信輔さんも、発足メンバーに名を連ねている。
笠井さんはフジテレビのアナウンサーからフリーに転身した後、血液がんの1つである悪性リンパ腫だったことがわかった。闘病生活を送った後、現在復帰している。自身が長期入院した経験を通じてネット環境の重要性を痛切に感じたことから同協議会の立ち上げに賛同した。現在も政府への要請活動を継続している。
同協議会の働き掛けもあって、政府の2021(令和3)年度新型コロナウイルス感染症感染拡大防止・医療提供体制確保支援補助金では、コロナ禍で入院患者と家族などの面会が制限されている中で、医療機関において入院患者などが利用できるWi-Fi環境整備費用も補助対象となった。
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