ところが、同補助金の申請期限は9月末に迫っており、時間的な猶予がほとんどない。また、長期化するコロナ禍で、前年度に同じ枠組みの補助金を受けていたことから、Wi-Fi環境整備の補助金を申請できずに断念するケースも少なくない。同協議会は申請期間の延長もしくは、補正予算が編成される場合には、Wi-Fi環境の整備が補助対象になるよう訴えていく考えだ。また、補助金の使い勝手の改善も求めている。
笠井さんは、「病室に患者用のWi-Fi環境があるのが当たり前の時代になってくる。理由は簡単で、コロナの影響でこの1年、全国の病院で誰もお見舞いに来られない状況が続いている」と強調する。
笠井さんが治療のために入院したのは、2019年12月だった。入院して1カ月間は、友人らが笠井さんを励まそうと見舞いに来てくれて病室は賑やかだった。しかし、それ以降、新型コロナの感染拡大が深刻になり、友人らは「笠井にコロナをうつしたら死んでしまう」として、誰も訪れなくなった。またクラスター(感染者集団)などの懸念も広がったために、家族も面会に来にくくなり、病室に誰も来ない状態が3カ月半続いた。
インターネットが孤独から救ってくれた
その時に、孤独から救ってくれたのがインターネットだった。笠井さんが入院した病院はWi-Fiが使用禁止で、自身のスマートフォンを使用して外部と通信を続けた。ブログを書いたり、YouTube動画を見たり、ラジオを聞いたりした。新聞や雑誌の原稿を執筆して送った。笠井さんは、Wi-Fi環境は娯楽のためだけに必要なのではなく、患者が情報収集するための手段として大事になっていると話す。
一方、笠井さんとともに活動している古賀真美さんは、ある患者支援団体の理事でプロジェクトマネージャーを務めている。急性リンパ性白血病を発症した弟に2002年、末梢血幹細胞提供をしたのを機に、白血病患者や家族・骨髄ドナーの相談支援をライフワークとしている。
古賀さんは、「病院が療養に専念してほしいとして、夜にWi-Fiを使えなくするという利用制限をする理由はよくわかる。しかし、抗がん剤治療中の患者さんは夜眠れなくて孤独を感じるので、そういった点も考慮してほしい。また小児病棟に長期入院する学童にとってWi-Fi環境はとても大事。環境が整備されていればオンライン授業などを受けやすくなる」と、日頃、接している患者やその家族の声を代弁して、病院の対応に期待をしている。
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