ボーナス払えず苦悶する社長を救った発想の転換

平社員が知らない「社長の悩み」の内実とは?

東田社長が経営する会社は、製造業で社員の数は40人くらい。なんとか赤字にはなっていませんでしたが、利益がままならず、一生懸命に働いてくれる社員に対して「ボーナスが払えない、昇給もできない」という状態が続いていました。

東田社長は、感情コンサルの場で、つらい心境を語ってくれました。

「自分が至らないばっかりに社員に申し訳ないという罪悪感がずっとあるんですよ。『子どもが生まれました』なんて聞いても、素直に喜べなくて、最初に浮かんでくるのは『ボーナスも出せなくてすまない』っていう思いなんです」

胸にためていた思いを吐き出していただき、感情コンサルを進めていくと、東田社長がいかに社員思いの素晴らしい方なのかがわかってきました。

「東田さんがこんなに胸を痛めて、苦しい思いをされているのって、全部、社員に対しての温かい思いがあるからですよね。自分のことはさておき、社員にボーナスを出してあげたい、昇給もさせてあげたい、子どもが生まれたらお祝い金だって出してあげたい。そういう思いがあるから、業績が振るわないことをご自分だけのせいにして、苦しんでおられるんですよね」

「そうですね。はい」

「それって、東田さん。むちゃくちゃに『イイ奴』じゃないですか!」

「はは、そうですね。たしかにイイ奴ですね」

東田社長の顔に、少しだけ笑顔が戻りました。

社員に「本音」を伝えてみると?

思いを吐き出して、自分の「苦しみの元」になっているものが、実は「社員への愛」なのだと確認してもらったところで、私は提案しました。

「東田さん。東田さんは、社員に対して『ボーナスが払えなくて申し訳ないと思っているんだ』という気持ちを、社員のみなさんへ伝えたことはあるのですか?」

「ええっ、そんなこと伝えたことないです」

「もし、社員のみなさんへ伝える機会があったら、東田さんの申し訳なく思っている気持ちを包み隠さずに伝えてみてはいかがですか? 『君たちを愛している』とまでは、恥ずかしいでしょうから言わなくてもいいと思いますが……。お話を伺っていると、社員のみなさんとの関係は良好のようですので、きっと、社員のみなさんの心に伝わるものがあると思いますよ」

「そうですね。わかりました。いつも申し訳ないと思っているということを、今度、伝えてみます」

その後、東田社長は、全社員の前ではありませんでしたが、幹部社員たちの前で、「ボーナスも出せなくてすまない。こんな社長についてきてくれて、本当に感謝している」という自分の苦しい胸の内を伝えたそうです。
そうしたら、幹部社員たちからは意外な言葉が……。

「えーっ、社長がそんなに苦しんでいたなんて、思ってもみませんでした!」

社員たちは、東田社長が思うほど、気にしていなかったんです。

社長の苦しみなんて、幹部社員レベルでもわからないもの。社長と幹部では、プレッシャーの重さが天と地ほど違うのですから、当然と言えば当然のことです。

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