何が"新興エアライン"の明暗を分けたのか 混迷のスカイマークと苦境脱出のスターフライヤー
では、なぜスターフライヤーは重要事象の記載を解消できたのか。不採算路線からの撤退や希望退職の実施など、リストラ策を進めたことで業績が持ち直した面もある。だが、それ以上に、同社の株式18%を保有するANAホールディングスによる後ろ盾が大きく影響している。
スターフライヤーでは、米原愼一前社長が2014年3月末で退任。全日本空輸から転じてきた松石禎己氏が新社長に就任した。ANAは財務や企画などの部門にも人員を送り込むとともに、スターフライヤーの運航路線で共同運航(コードシェア)を拡大するなど、実質的な支援に入っている。
効果は、スターフライヤーの今第1四半期決算にも現れている。旅客数は33.1万人と前年同期比10.6%減だったにもかかわらず、売上高は80億円と同12.5%増となった。この逆転現象にはカラクリがある。「決算短信の旅客数には(卸売り扱いとなる)ANAのコードシェア分が含まれていない」(スターフライヤーのIR担当者)のだ。
7月23日には、ANAとのさらなる連係強化策を打ち出している。1日10便の運航で供給過剰ぎみにある羽田―福岡線を同7便に減らす一方、空いた発着枠を羽田―山口宇部という新路線に充て10月下旬から運航を始める。さらに、同路線を縮小するANAとコードシェアを実施。戦略的な連携関係を深めることで、一層の収益基盤強化を狙う。
逆に、独立を貫いてきたスカイマークには大手の後ろ盾がない。その分、信用力やネットワークなどの面で不利な立場にある。これが両社の明暗を分けた理由にほかならない。
規制緩和の“あだ花”?
もっとも、窮地を脱した反面、スターフライヤーはANAへの依存を一段と強めることになった。同じく規制緩和によって誕生した宮崎のソラシドエア(スカイネットアジア航空)、北海道のAIRDO(エアドゥ)に対しても、ANAは2割未満を出資し、コードシェアの関係を築いている。これは、新興エアラインが自前で座席を売り切る営業力を構築できていないことの裏返しでもある。
そして今、独立系の新興エアラインとして最後の牙城だったスカイマークまでもが窮地に追い込まれている。1990年代後半の規制緩和とは何だったのか。その意味を問い直す時期が来ているのかもしれない。
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