横浜市長選、菅首相を襲った「最側近惨敗」の痛撃

自民総裁選先行論が支配的、「9月解散」は困難に

山中氏は市大教授時代にコロナ対策での抗ウイルス抗体の研究などで知名度を上げ、選挙戦でもIR反対だけでなくコロナ専門家として政府の対応を厳しく批判した。

これに対し、誘致反対票を奪い合った小此木氏には、後ろ盾である首相のIRでの「政治的変節」や横浜市での感染爆発によるコロナ対応批判が強い逆風となり、自民、公明両党の分厚い組織票の半分もまとめられなかった。

敗北した小此木氏は22日夜、政界引退を表明。菅首相は「ご苦労様」とメールで伝えただけだった。一夜明けた23日朝に官邸で記者団のインタビューに応じた菅首相は、「大変残念な結果で、謙虚に受け止めたい」と必死に平静を装った。

一方、菅首相の命を受けて選挙戦に張り付いた坂井官房副長官は22日夜のテレビインタビューで「自民党で小此木候補に推薦を出すことができなかった。まとめきれなかった」とうなだれた。

菅首相への拒否感が全国に拡大

こうした状況に、与党幹部は「最も影響力を持つ横浜でも菅首相への不信、不満が拡大している証拠」(自民選対)と菅政権で次期衆院選を戦うことへの不安を隠さない。一部に「一地方選の特殊事情」(二階派幹部)との強気の声もあるが、自民党内には「菅首相への拒否感が全国的にも拡大している」ことへの危機感があふれる。

緊急事態宣言の期限延長もあって、与党内には今回の結果を受けて「ますます9月解散は困難になった」との声が広がる。これに伴い、自民党内でも解散先送りによる自民総裁選先行論が支配的となりつつある。

総裁選日程は8月26日の総裁選管理委で決まる。今のところ衆院解散がなければ「9月17日告示、同29日投開票」の日程が有力だ。ただ、自民幹部も「状況は危機的。総裁選前に退陣論が噴き出す」と浮足立つ。二階幹事長らは「総裁選を実施しても、菅首相の再選は当然」と繰り返すが、公明党幹部は「それでは野党が勢いづくだけ」と危機感を隠さない。

一方、今回の市長選で菅首相を追い詰めた立憲民主の江田憲司代表代行は衆院選をにらみ、「いい受け皿があれば自民党は恐るるに足りない」と胸を張る。立憲など主要野党は野党選挙共闘の拡大・強化に向け、調整を急ぐ構えだ。

菅首相は23日朝、改めて総裁選出馬の意思を明言したが、大派閥領袖の岸田文雄前政調会長が出馬に踏み切れば、党員・党友も含めたフルスペックの総裁選となるのは確実だ。全国的な感染爆発が収まらない中での総裁争いとなれば、菅再選が揺らぐ可能性も少なくない。

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