雪だるま式に膨れる「不安」から自由になるコツ 「人との接触」が極端に減っているときは要注意

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冒頭でもお伝えしたような几帳面で真面目な方は、しっかりとソーシャルディスタンスを守り、より人とかかわることを避けようとするでしょうから、この“負のスパイラル”にさらに陥りやすいとも言えます。

まずは、どんな形でもよいので、人と話す機会を増やすことです。こんなご時世ですからもちろんオンラインや電話を活用しましょう。“話すこと”で、自分の気持ちや自分に起きた出来事をアウトプットできることが大事です。家族や友人だけでなく、会社の同僚や仕事関係者など、また、ゆるくつながれるコミュニティーでの会話ができると、効果的です。

これに加えて、気分の落ち込みが激しい方の場合は、情報をシャットダウンすることも心がけましょう。今はテレビをつけてもスマホをチェックしてもコロナ絡みのネガティブ情報ばかり。そうした情報に触れすぎないことも大切です。往々にして人は不安になればなるほど情報を欲するものですが、仕事で必要なとき以外はネットやテレビも見ない、いわば“情報入手の自粛”が大切です。

「不安」はフォーカスすればするほど大きくなる

また、コロナの問題は、現状いくら考えてもどうにもなりません。つまり私たちは、自分の力ではコントロールできないものと対峙して、それに対して不安を感じたり、葛藤したりしているわけです。でも実はこうした状況は、コロナに限ったことではありません。

「予期不安」というものがあります。例えば、電車に乗ってお腹が痛くなったとしましょう。すると「また痛くなったらどうしよう……」と不安がよぎり、電車に乗るたびにお腹に意識が向くようになり、本来痛くもないはずなのに痛さを感じるようになってしまいます。それを気にすればするほど意識はさらにお腹に向き敏感になってゆく。

不安は不安事項にフォーカスすればするほど、大きくなるのです。考えれば考えるほどその不安が雪だるま式に大きくなって、最終的にはどうにもならない無力感や恐怖に変わってゆくわけです。しかし、実は不安自体が大きくなるものではありません。不安に集中すればするだけ自分のキャパシティーが減ると考えてください。

心のキャパシティーを箱と考えたときに、例えば100の容量があった場合、そこへ10の不安要素を入れても、大した問題にはなりません。

しかし、普段はできる思考が停止したり行動が制限されることにより、100入る容量があったはずの箱がいつの間にか、50や20というように段々小さくなってしまうのです。そうすると、同じ10の不安材料が、心の中では、当初の10%でなく、20%、50%と占める割合が多くなっていくのです。要するに、不安に注目すればするだけ、不安の割合が大きくなるのです。

よって、不安を注視せずに、ほかのことに目を向けることが大切です。「コントロールできることに意識を向ける」ことです。具体的には、いままで「やってみたいな」と思っていたことにチャレンジしてみる、語学や資格の勉強を始めてみたり、料理のレパートリーを増やしたりSNSの投稿を始めてみたり。なんでもいいので少しでも興味があることにチャレンジしてみるといいと思います。

現在の不安にフォーカスする時間と意識を減らしていくことが大切です。思考を止めることはできませんので、よい意味で気を紛らわせることも大切です。

大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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