低すぎる日本の検診受診率 前国立がんセンター名誉総長・垣添忠生氏③

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かきぞえ・ただお 国立がんセンター元総長。1941年生まれ。東京大学医学部卒業。都立豊島病院、東大医学部泌尿器科助手などを経て、75年から国立がんセンター病院に勤務。同センターの手術部長、病院長などを務め、2002年総長に就任。07年に退職し名誉総長になる。近著に『妻を看取る日』。

私は妻をがんで亡くしましたが、私自身もがんの経験があります。10年ほど前、国立がんセンターの総長だったときに、大腸がんになったのです。総長が、早期に発見できるがんで死ぬわけにはいかないので、年に一度、検診を受けていた結果、見つかったのです。

検査で便の潜血反応が陽性になり大腸内視鏡検査をしたところ、ポリープが発見され、そのままポリープ三つを切除しました。そのうちの一つに大腸がんがありましたが、早期だったので、その後、特別な治療をすることなく完治しました。

検査と切除で半日ほど病院にいただけで、入院はせず、仕事は1日も休みませんでした。ただ、切除したあとの出血を止めるため、1週間ほどお酒を飲むことはできませんでしたが。

がんの多くは早期に見つかれば完治できる

このように、がんでも早期に発見できれば簡単に治せるのです。むしろ、がんの多くは早期に見つかれば完治できるのです。

いま国が、がん検診の対象にしているのは、大腸がん、胃がん、乳がん、子宮頸がん、肺がんです。これら五つのがんは早期発見できれば完治する可能性は極めて高いといえます。

特に私のような小さな大腸がんの場合は簡単に治せます。胃がんも、レントゲン検査と内視鏡検査をうまく組み合わせれば早期に見つけられます。大きいがんでなければ、数日の入院で済みます。

乳がんも、早く見つけ、リンパ節などへの転移がなければ、さほど負担なく治ります。最近は乳房温存という、手術をしたかしないかわからないぐらいきれいに治す技術も発達しています。ただし、発見が遅いと、手術後に抗がん剤治療やホルモン療法などをしなければならず、経済的負担が膨大になることがあります。

 子宮頸がんも、早く見つければ、子宮の一部をほんの少し切除するだけで、その後の妊娠も十分可能です。肺がんについては、実は早期発見が難しいのですが、これも早く見つければ切除手術で治せます。

つまり、がんは早く見つけられれば、ごく普通の病気として、体や家計への負担も少なく治すことができるのです。

しかし、今の日本のがん検診受診率はどれも2割から3割程度。子宮頸がんでいえば、日本23%に対し、イギリス79%、アメリカ84%。日本のがん検診受診率はOECD(経済協力開発機構)加盟30カ国中、最低レベルなのです。

日本人は生涯のうち2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなります。その現実への備えとしては、あまりにお粗末ではないでしょうか。

週刊東洋経済編集部
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