山と海どっちの車窓を選ぶ?広島ご当地鉄道事情 山間部「究極のローカル線」から鉄道連絡船まで

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広島は、全国屈指の路面電車の街である。広島駅前から出発する広島電鉄の路面電車は原爆ドームや平和記念公園、八丁堀などの繁華街から広島港、さらには海沿いを遠く走って宮島の玄関口まで路線網を広げている。

原爆ドームの横を走る広電の電車。超低床車両も増えている(撮影:鼠入昌史)

1912年に開業し、1945年8月6日の原爆投下に際しても市内線はわずか3日後から運転を再開して市民に希望を灯した。戦後、モータリゼーションが進んで他の都市の路面電車が縮小していく中で、広島は時流に反して軌道への自動車乗り入れ禁止を貫いた。そうして路面電車を守り抜き、令和の今になっても広島は日本一の路面電車の街であり続けている。広電は、カープやサンフレッチェなどと並ぶ、広島の街のシンボルである。

延伸計画もあるアストラムライン。広島市北西部のニュータウンを走る(撮影:鼠入昌史)

広島の中心市街地には広電だけでなくアストラムラインという新交通システムの路線も延びている。広電だけではどうしたってカバーできない山間部を切り開いて生まれたニュータウンへ向かう路線だ。今後、延伸する計画もあるというがはたしてどうなるか。もしかすると、広電に並ぶ広島のシンボルになるのかもしれない。

青春18きっぷで乗れる航路

広島市内で路面電車を堪能すれば、あとは山陽本線に乗って山口県に向かって抜けていくだけだ。この区間の山陽本線はおおよそ県境を少し越えた先の岩国駅を終点として走る。

市内を抜けた広電は広島湾を見ながら宮島口を目指す(撮影:鼠入昌史)
宮島口と宮島を結ぶ連絡船。「青春18きっぷ」で乗れる唯一の航路だ(撮影:鼠入昌史)

その途中にあるのが安芸の宮島の玄関口・宮島口駅。ここで船に乗り継げば、鹿と戯れる宮島へ。

ここで宮島に向かう船は2つある。ひとつはJR西日本の宮島フェリー。もうひとつは宮島松大汽船。どちらに乗っても所要時間はほとんど変わらないのだが、鉄道の旅と決め込んだのならば宮島フェリーだろう。宮島フェリーは現代に残るJRで唯一の鉄道連絡船。宮島口駅を介して山陽本線との接続も確保され、乗車券も通しで買える。

わずか10分の船旅なので青函連絡船や宇高連絡船のような旅情は持たないが、それでも“JR最後の鉄道連絡船”。広島の鉄道旅の締めくくりに、これほどふさわしいものはないだろう。

鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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