山と海どっちの車窓を選ぶ?広島ご当地鉄道事情 山間部「究極のローカル線」から鉄道連絡船まで

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同じ広島県内には、末端区間が廃止されるも宅地化が進んだ結果、廃止されたうちの一部がよみがえった可部線という例もある。路線の存廃は、安易にどうとかいうほどにシンプルな話ではないのだ。

可部線では2017年に可部―あき亀山間が延伸開業。事実上の廃止区間の復活だった(撮影:鼠入昌史)

さて、中国山地のローカル線の旅はこのあたりで終えて、瀬戸内の海を見よう。山陽本線は備後のターミナル・福山を出ると映画と造船と坂とラーメンの町・尾道を経て三原駅に着く。尾道から三原にかけては瀬戸内海の近くを通り、列車の窓を開ければ潮風が吹き込んでくるさわやかな区間だ。

そして糸崎・三原駅で岡山方面からの列車はおおよそ終点を迎え、同じ山陽本線でも列車を乗り継いで広島方面を目指すことになる。三原から広島へは広島県南部の山間部。貨物列車が急勾配を越えるために補助機関車を連結するという難所“瀬野八”もここにある(八本松駅と瀬野駅の間だ)。ただ、急勾配はあってもこちらのほうが直線的に広島に向かう。電車はもちろん補機いらずでこともなげに駆け抜けるので、大きな問題はない。

観光列車が走る呉線

ただ、どうせ瀬戸内沿いに来ているならば海を見たい。せっかく尾道・三原で海の近くに来ているのだから、もう少し海の近くを走りたい。そこで三原駅で呉線への乗り換えである。

瀬戸内の島々を見ながらゆく呉線。写真は「etSETOra」の前身観光列車「瀬戸内マリンビュー」(撮影:鼠入昌史)

呉線はその名の通り造船と戦艦大和の町・呉を通る路線だ。内陸をゆく山陽本線に対し、瀬戸内海に面する海岸沿いを走る。ほとんどの区間で車窓から海を見ることができるのが大きな特徴だ。さらにその向こうには瀬戸内の小さな島が点々と。その間を小さな船がまわっているのが見えて、瀬戸は日暮れて夕波小波。晴れる日の多い瀬戸内の列車旅は、なんといっても呉線に限る。2020年からは観光列車「etSETOra(エトセトラ)」も運転を開始している。

そうして呉線(山陽本線でもいいが)に乗って広島駅にやってくる。広島駅は広島市のターミナルにして、中国地方で最もお客の多い駅だ。駅前からは広電の路面電車が延びている。

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