がんを疑うべき人が抱える「9つの症状」と治療法 兎にも角にも大事なのは「早期発見・早期治療」

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がんができると、「腫瘍熱」という発熱症状が起きたり、腫瘍部から出血して血便が出たり、貧血症状が出たりします。また内臓の働きに異常が出て、急にやせる、急に血糖値が上がる、肌に異常があらわれる、といったこともあるのです。

「何かいつもと違う」と感じる症状があれば、必ず受診するようにしてください。

治療法はさまざま

続いては、がんの治療についてです。がんの標準治療は、手術・化学療法(薬剤)・放射線に分かれ、何を使うかはがんの種類やステージ、また医師の得意分野によっても異なってきます。がんのステージはIからIVまでの4段階あり、たとえばステーシIのがんなら手術で腫瘍を切除するだけの場合も多いのですが、ステージが進行してくると抗がん剤や放射線を組み合わせての治療になっていきます。

肺がんなどの場合、抗がん剤でまず腫瘍を小さくして、切除する範囲を最小限におさえるという方法もあります。このように治療法の選択肢は幅広く、患者側も「どのような方法があるのか」を知っておくことは、ベストな治療を考える上で重要になります。

特に近年は化学療法の進歩がめざましく、従来の抗がん剤では悪性腫瘍も正常な細胞も一緒にたたいてしまっていたところを、「分子標的薬」という悪性腫瘍だけをピンポイントでたたける薬剤ができ、治療の選択肢も広がっているのです。

ただし、薬剤の種類が増えてきたことで、それらを「適切に扱える医師」が少ない、ということが課題にもなっています。また、分子標的薬のような新しい薬剤は薬価の設定が非常に高く、1日数万円かかることも珍しくありません。保険適用であれば高額療養費制度が使えますが、多用されれば国の医療費を圧迫することにもつながります。

人間の免疫機能を利用した「免疫療法」も注目を集めています。たとえば免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブ(商品名:オプジーボ)の治療も保険が一部のがんにしか適用されなかったり、効果があらわれるまでに時間がかかるので、急速に大きくなっているがんには効果発現が間に合わないなど、決して万能な治療なわけではありません。

中にはエビデンスのない薬剤を組み合わせるなど、信頼性に欠ける治療を行っているクリニックもあるので、「先進的な治療法」「代替医療」については慎重に考えていかなければなりません。

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「Journal of the National Cancer Institute」(2017年)に発表された論文では、代替医療を選んで標準治療をしなかった人が5年以内に死亡するリスクは、標準治療を受けている人と比べて5.7倍という結果もあります。いきなり飛び道具に頼るのではなく、早期発見を行い、標準治療で治していくほうが確実性は高いのです。

現在の医療では、固形がんの場合はステージI〜IIIまで、血液がんの場合にはステージIVでも治せる可能性があります。なお、このような最新の治療法について知りたいときには「がん薬物療法専門医」の資格を持つ医師が候補として挙がります。専門医資格の中でも最難関と言われる資格で、資格の取得・保持には幅広い経験と知識が必要になります。日本臨床腫瘍学会のホームページから名簿を検索することができるので、必要に応じて利用してみてください。

明星 智洋 東京がん免疫治療センター長

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みょうじょう ともひろ / Tomohiro Myojo

江戸川病院腫瘍血液内科副部長 兼 感染制御部部長。東京がん免疫治療センター長。MRT株式会社 社外取締役。1976年岡山県生まれ。高校生の時に、大好きだった祖母ががんで他界したことをきっかけに医師を目指し、熊本大学医学部入学。その後、医師国家試験に合格。岡山大学附属病院にて研修後、呉共済病院、虎の門病院、癌研有明病院にて血液悪性腫瘍およびがんの化学療法全般について学ぶ。その後2009年より江戸川病院にて勤務。血液専門医認定試験合格、がん薬物療法専門医最年少合格。専門は、血液疾患全般、がん薬物療法、感染症管理。

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