「愚かな失敗」に終わらせないための組織風土 科学者と経営者の「輝かしい失敗」から学ぶ

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失敗は多くの要素が複雑に絡まる複雑系のなかで起きる。そこで、理論物理学出身のイスケ氏は、失敗を論理分析するのではなく、脳科学、創造性との関係、U理論など、さまざまな確度から照射して、「人間と失敗」のありのままの姿を浮き上がらせる。そして、失敗をイノベーションのプロセスの一環として捉えるための実践的な理論を展開する。

イスケ氏は輝かしい失敗を、次の16の型に分類する。

①見えない象…全体は部分の総和より大きいのに部分しか見ない
②ブラックスワン…予見できない出来事が頻発する
③財布を間違う…誰かには好都合だが、他の誰かに負担がかかる
④チョルテカの橋…解決すべき問題は1カ所にとどまっていない
⑤欠席者のいるテーブル…すべての関係者が参加しているとは限らない
⑥熊の毛皮…成功する前に結論を急ぎすぎる
⑦電球の発明…何をやっているかがわかっていれば、それを研究とはいわない。試行錯誤を軽んじる
⑧兵隊のいない将軍…アイディアはよいが、人、モノ、カネ、情報、知識等のリソース不足
⑨捨てられないガラクタ…やめる術がわからない
⑩深く刻まれた渓谷…染みついた思考・行動パターンから抜け出せない
⑪右脳の功罪…合理的根拠のない直感的な判断をしてしまう
⑫バナナの皮ですべる…アクシデントが起きる
⑬ポスト・イット…失敗したけれど、偶然の幸運にも恵まれる
⑭アインシュタイン・ポイント…単純化しすぎても、複雑化しすぎてもいけない
⑮アカプルコの断崖ダイバー…タイミングを誤ってはいけない
⑯勝者総取りの理…生き残れるのは1人しかいない

前出のコロナ敗戦は、このうち「⑧兵隊のいない将軍」「⑬ポスト・イット」「⑯勝者総取りの理」を除く13の型が当てはまりそうだ(コロナ敗戦では将軍も不在、偶然の幸運もなく、勝者もいない)。

日本のノーベル賞受賞者たちの「輝かしい失敗」

イスケ氏の説く実践理論の内容と学ぶべきポイントについては、ご本人による東洋経済オンラインの別稿で紹介されているので参照されたい。本稿では、日本における輝かしい失敗、BriFa in Japanの事例を探ってみたい。

日本には25名のノーベル賞受賞者がいるが、失敗経験者が少なくない。代表格は『生涯最高の失敗』の著書もある田中耕一氏(島津製作所シニアフェロー、化学賞受賞)だろう。

タンパク質の質量分析のための方法を開発した。田中氏は実験中、別々の実験で使うつもりだった試料を混ぜてしまうという失敗を犯してしまう。それでも、「捨てるのはもったいない」の日本流〝モッタイナイ精神〟で実験を続けたところ、ずっと求め続けていた結果が初めて得られた。

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