「愚かな失敗」に終わらせないための組織風土 科学者と経営者の「輝かしい失敗」から学ぶ
しかし、平面的なポジショニングで差別化を図っても、顧客には意味がなかった。「サントリー=中国茶」という思考パターンから抜け出せなかった「⑩深く刻まれた渓谷」。その失敗に気づいたリーダーは、緑茶と真正面から向かって、伊右衛門の開発に着手し、大ヒットへと導くのだ。
挑戦と失敗を奨励した鈴木敏文氏
では、どうすれば、輝かしい失敗を生み出せるのか。イスケ氏は、社員が失敗から学習できる「環境」を特に重視し、「安心して失敗できる場をつくる」ことを推奨する。
これに関して、思い浮かぶのはセブン&アイホールディングスの前会長兼CEOの鈴木敏文氏(現・名誉顧問)の経営手法だ。鈴木氏は社員に対し、徹底して新しいことへの挑戦を求める厳しい経営者だったが、挑戦する限りは失敗も許容した。
たとえば、在任中、10年後、20年後を想定し、セブンーイレブンの新しい店舗のあり方に挑戦させる「ストア・イノベーション」のプロジェクトを立ち上げさせたときのことだ。選抜メンバーに、こう指示した。
「どれだけ失敗しても、店がつぶれてもかまいません。ただ全力で新しいことに挑戦してください」
また、イトーヨーカ堂では、地域の固有のニーズに対応するため、店長を中心に自由な発想で運営する「独立運営店舗」の実証実験を行った。その際、店長に発した言葉。
「売り上げが半分になってもいい。好きにやりなさい」
流通業が銀行を設立する前代未聞のセブン銀行設立プロジェクト。四面楚歌の難交渉に疲れ果てた担当役員には、こう声をかけた。
「失敗してもいいじゃないか。失敗も勉強のうちだよ」
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