まるでシーソー?日本のワクチン政策の「現在地」 過去の「予防接種行政」から現状を考える

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ワクチン接種による好ましからざる反応は、ほとんどが軽微なものであり、自然軽快するものの、まれに重篤なものが発生するため注意深く観察する必要がある。そのため、政府は厚生労働省の審議会で社会の副反応の発生状況を注意深くウォッチしつつ、救済制度も有している。コロナワクチンについて言えば、政府は「現時点でワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められない」と述べている

副反応を議論する際に注意しなければならないのは、ワクチンには、「副反応(adverse reactions)」と「有害事象(adverse events)」という似たような2つの異なる概念が存在することだ。

この2つの概念の違いは、「因果関係」と「相関関係」に関する違いである。「副反応」は、ワクチンの「主反応」に対する対義語であって、いわゆるほかの医薬品の副作用と同様、ワクチン接種と「因果関係」がある生体反応(症状)を表している。

一方、ワクチン接種後の「有害事象」は、ワクチン接種と比較した場合に時間軸上は後に発生した何らかの生体反応を表しており、ワクチンとは時間的前後関係(相関関係)にはあるものの、生体反応としてはワクチンとは「因果関係」がまったくなく、偶然発生したものも含む広い概念である。この2つの概念はよく誤解される。「有害」という文言が誤解を招きやすい表現であるということもその一因だ。

「ワクチン忌避」「反ワクチン」の動き

作為過誤回避と不作為過誤回避のシーソーの傾きは、ワクチンの有効性(感染症リスクを低減すること)と安全性(副反応リスクを増加させないこと)にかんする純然たる科学的洞察のみによって決まればいいのだが、実際にはほかのさまざまな要素が介入し、政治問題化する。

その最たるものが、「ワクチン忌避」や「反ワクチン」と呼ばれる運動である。これは、作為過誤回避と不作為過誤回避のシーソーを作為過誤回避の方向に傾けるように作用する。

ワクチン忌避/反ワクチンとは、ワクチン接種に対する何らかの躊躇や拒否反応のことであり、特定のワクチンの有効性・安全性に対して科学的コンセンサスが得られていたとしても、それと関係なく発生する。

ワクチン忌避を示す人々の理由は、安全性への疑念が払拭できない、有効性に対する価値が見出せない、政府が実施する行政行為全般に対する根本的な不信感や、製薬企業に対する不信感などから、ワクチンが一定の病気を引き起こすために作られたものであるといった陰謀論や、科学を擬制した言説への確信などさまざまだ。ワクチン忌避の対象は、ワクチン全般に向けられる場合もあれば、特定の製剤に向けられる場合もある。

ワクチン忌避は現下の新型コロナ危機でも問題となっているが、その危険性は、新型コロナ危機以前から国際社会で指摘されてきた。例えば、2019年にWHOが公開した「国際保健における10の脅威」では、エボラ出血熱などの高病原性の感染症や、パンデミックインフルエンザと同列の脅威として、ワクチン忌避が挙げられている。

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